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【独身淑女のクリスマス】 あとがき・作者より

→ 作品ページにもどる あとがき 読者の皆さんへ 「独身淑女のクリスマス」を楽しんでいただけましたか?イギリス摂政時代のクリスマスについて調べるのはとても楽しく、特に食べ物の描写は、見ているだけでお腹がすいてくるようでした!  摂政時代に使われていたような1837年の模様を使って、ジェラルドの赤と黒のスカーフを編んでみました。ブログに載せてありますから、編み物をされる方は是非http://bit.ly/KnitGerardsScarfをのぞいてみてください。  ウィンウッド夫人とミスター・ソル・ドライデール、そしてその家族のロマンスについてのストーリーを楽しみにしていてくださいね。この二人のちょっとしたロマンスもあるかもしれません!ウィンウッド夫人シリーズの続巻は今年の終わりに発表する予定です。Eニュースレターでお知らせしますから、購読をお忘れなく。  摂政時代のロマンスをテーマにしたその他の著書には、カルテット紳士シリーズの一冊目「主へのプレリュード」があります。今年の後半から来年にかけて、このシリーズの続巻を予定しています。 キャミー 追伸  校正者が見落としたタイプミスなどにお気付きの方は、どうか私にメッセージを送ってください。よろしくお願いします! → 作品ページにもどる → 他の作品を見る ※最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

【独身淑女のクリスマス】 第22章

→ 作品ページにもどる 第22章 一月一日  ミランダがいつも四苦八苦する小塔のドアは、ジェラルドの力強い手で容易に開いたが、鞭で打たれるように強い風に今にも吹き飛ばされそうだった。 「風が強すぎるわ。戻りましょう」 「だけど、ウィンウッド夫人がここじゃないとダメだって」 「ウィンウッド夫人?」  ミランダはマントを体に巻き付け、彼についてウィントレルホールの屋根の上に出た。風は強かったものの、上の方では太陽が輝き、時折、細くたなびく雲のために一瞬曇る程度で、下にいる彼らを照らし、赤いレンガはオレンジがかった金色に見えていた。  彼らは丸屋根の上で風が当たらない場所を見つけ、そこでは風が体の周りで優しく渦を巻いていた。ジェラルドは、厚地の大外套の袖を自分と彼女の周りに巻き、彼女を引き寄せてキスをした。  レンガの欄干を背中にし、繭に包まれているような彼のコートの中で、彼女は彼に身を委ねた。彼の唇は彼女を味わい、それから顎、首へと動いていった。 「ジェラルド」 「うん」 「キスするために私をここに連れてきたわけじゃないでしょ?」 「どうして分かったの?ちょっとプライバシーが欲しかったって」 「プライバシーを気にするんだったら、昨日みたいなキスはしないでしょ」  二人の男を縛った後、彼らは借りた馬車で村まで走り、地元の保安官に二人を引き渡して、森にハリエットの遺体があることを通報した。その後ミスター・ドライデールは、彼らを乗せて馬車で屋敷に戻り、その横をマイケルが馬に乗って走った。  その時ジェラルドは、ミランダが馬車から降りるのを助けた後、彼女を引っ張って熱烈なキスをしたのだった。馬小屋から走ってきた馬丁、屋敷の表玄関のドアを開けた執事、そして彼らを見ようとポツポツ出てきた家族の前で。フェリシティが恐ろしい金切り声をあげたので、二人は離れた。 「昨日はただフェリシティを悩ませるためにキスしただけだよ」彼女の耳にささやいた。顎に当たった彼の唇が震えるので、彼女は身震いした。 「あなたについて階段を上がってくる前に、もっと抵抗したらよかったわ。その膝で——」 「君の湿布におとなしく服従しただろ?豚小屋みたいに臭かったんだよ、そういえば」 「そんなことないわ」 「だから僕の膝はスモモみたいに...

【独身淑女のクリスマス】 第21章

→ 作品ページにもどる 第21章 ハリエットは、ミランダが隠れている木の数ヤード先まで来ていた。一、二分もすれば、通り過ぎるだろう。  そうしたら、木々を通り抜けて声が漂ってきた。「ミランダ!」  大変だ、あれはジェラルド。  ハリエットは頭をぐるぐる回して、後ろにある木々の辺りを探した。  ジェラルドはどうやって気が付いたのか?彼に呼びかけることはできない、だけど、ハリエットが彼に銃を向けることになってはならない。 「ミランダ!」  ミランダは動かず、息を殺していたが、上の枝から雪の塊が落ちてきた。その塊は、もっと雪に覆われた枝にぶつかり、突然、雪が連なって地面に落ちた。森の中で動くものは、他に何もなかった。  ハリエットは上の方を見上げた。ミランダが木の大枝にしがみついているのが見える。そして、発砲した。  焼け付くような痛みが肩の中で爆発した。星が見える。手が樹皮の上で滑るのを感じ、もっと強くつかもうと頑張った。だが、手足が思うように動かない。枝の上で横に滑り、足で枝を捕まえた。そして腕で。火が槍のように肩を突き刺した。  だがハリエットは発砲した。もうジェラルドは撃てない。  ハリエットは怒りをむき出しにした、言葉にならない叫び声を上げた。ミランダが思い切って肩越しに目を向けると、地面にピストルを投げつけ、木に突進してくるハリエットが斜めに見えた。ハリエットが木を登ってきたので、ミランダは枝が揺れ始めるのを手で感じた。  「ジェラルド!」ミランダは少しずつ木の幹から遠ざかり始めた。ハリエットから離れたい一心で。  誰かが走ってくる足音が聞こえる。ハリエットが雇った二人の男が近づいてきた。きっとジェラルドは彼らに負かされるだろう。  しかしその時、馬の蹄の音が森の中で響き渡り、彼女の鼓動と重なった。一頭ではない。少なくとも二頭、もしかしたら三頭かも? 「ミランダ!」だがその声はまだとても遠い。 「ジェラルド!」つかまっていた枝が急に下がり、ミランダの叫びは甲高い金切り声に変わった。手が少し滑ったが、足でもっと強くつかまった。 「惨めね、落ちればいい——」ハリエットは、蛇とその毒が渦巻く地獄から聞こえてくるような恐ろしい声で言った。そして、ミランダが捕まっている枝に再び体重をかけた。  ...

【独身淑女のクリスマス】 第20章

→ 作品ページにもどる 第20章 ジェラルドが図書室に向かったのは、ただ不機嫌だったからだ。大晦日の夕食会のために着替えをする時間を知らせるベルが、もうすぐ鳴るだろう。だが彼は、セシールが持っている二流のブランデーを一、二杯飲みたいだけだった。  女性にプロポーズしたのは初めてだった。一回目の試みで断固として拒否されたのは、ただ運が悪かっただけだろうか。  そして、自暴自棄の男子生徒のように、彼女にキスをしてしまった。  そうしたら、彼女はキスを返した。  それから……  彼女がわざと自分を突き放したことを、論理的に理解することはできたが、あれは、まるでお腹にパンチを食らうような言葉だった。 (彼女はどうすればお前さんが傷つくかを知ってる。誰とも親しくならない方が身のためだぞ)  いや違う。ミランダはそういう感情を持って生きてきたのかもしれないが、自分だったら、愛のない生活の方がよくないことを彼女に伝えようとするだろう。  ミランダのキスによって、彼女がジェラルドをしっかり繋ぎとめているという事実が単に強められた。彼の家は、彼女がいる場所だった。  そういう思いに耽りながら図書室の窓に目をやるとすぐ、マイケルが南側の芝生を横切って走ってくるのが見えた。子供を抱えて。  エリーだった。  ジェラルドは足を引きずって図書室の外に出、首の骨が折れそうになりながら階段を駆け下りた。 「キャプテン・フォーモント!」ミスター・ドライデールの声が上の踊り場から聞こえたが、ジェラルドは止まらず、大きな円形の玄関ホールでマイケルに会った。走るマイケルに強く抱かれていたことに加え、見知らぬ人の腕の中にいる恐怖のためか、エリーは泣いていた。ジェラルドを見るなり、彼の方に手を伸ばし、ジェラルドはエリーを抱えるために松葉杖をやむなく落とした。 「ミランダ……」マイケルは息を切らした。「馬車、ハリエットが……」  氷のように冷たい水が背筋を走った。「どこに?」  マイケルは頭を振った。「馬車で……」  そうだ、セシールの一番軽い馬車を借りたら追いつくことができる。しかしエリーが…… 「僕が乗ろう」ミスター・ドライデールがいきなりすぐ近くに現れた。「大尉、先に馬小屋まで行って、馬丁に言ってくれないか。キャプテン、エリーは...

【独身淑女のクリスマス】 第19章

→ 作品ページにもどる 第19章  エリーがいない。  ミランダは他の子供達を連れて下の庭園から既に戻っており、マントやスカーフ、帽子、ミトンを脱がせるのに大騒ぎだった。ナーサリーはあまり心地よくない濡れたウールの強い臭いがしていて、部屋の隅に押し込まれた松の枝が唯一新鮮な空気を放っていた。  大晦日の夕食会があるので、今日の子供達の夕食はいつもより時間が早かった。キッチンでは単に、子供達の夕食と、盛大なパーティーのための食事を同時に準備することができなかった。しかし食事の時間になると、エリーはどこにもいなかった。  ミランダは、ナーサリー棟や、あらゆるクローゼット、部屋の隅々を二十分ほど探し回った。誰もいない廊下でアンダーメイドのジーンが近づいてきた時には、本当に心配になり始めた。「エリーを見つけましたよ、ミス・ミランダ」  二日前に家族棟であった出来事以来、ミランダがジーンを見かけるのは初めてで、今ここに彼女が現れたことと、エリーがいないことで、ミランダの息は喉の中で凍りついた。「どこなの?」 「私についてきてください、ミス」 「パラダイスへ行く道を約束してくれるまで、あなたと一緒には行かないわ」  ジーンは、口と目のシワがよく見えるほど近くまで来てミランダを驚かせ、低い声で言った。「もう一度エリーに会いたいんだったら、私と一緒に来るのよ」 「エリーに何かあったら、私が何をするか分かるわよね」ミランダは暗い声で言った。  その言葉にジーンはドキッとして、淡い色の目を二、三回瞬きさせた。そして、その目は細くなった。「私と一緒に来なければ、彼女はひどく傷つきますよ」  ミランダは体が固くなるのを感じ、ジーンがマントを着ているのに気が付いた。「外に出るの?ちょっとマントを取りに行かせて」ジーンは単純に抵抗しているように見えたが、ミランダは付け加えた。「マントを取りに行かせてくれたら一人でそっと出て行くから」  ジーンは、ウールのマントを取りに行くミランダの後をついて寝室に入ってきた。ミランダがボンネットと、ジェラルドの黒と赤のスカーフも掴んだのを見ても、反対しなかった。そしてミランダは、ジーンの後をついて階段を降りた。  マイケルは夕食会の準備を手伝っているはずだった。二人は食堂かキッチンを通り抜けるだろうか?ミ...

【独身淑女のクリスマス】 第18章

→ 作品ページにもどる 第18章 ジェラルドは、やみくもに通路を下って行った。ミランダが投げつけた冷淡な言葉が彼女の本心ではないことは、分かっていた。ミランダは自分に無関心ではなかった。あのキスで本当の気持ちをさらけ出してくれた。  彼の安全を気遣って、ミランダは拒絶したんだろう。そう思うと、寒さが浸み込む手足が温まってきた。だから彼女は嘘をついたに違いない。  嘘をついたにしては、妙に上手だった。彼女は彼の目をまっすぐ見て、愛していないと言った。  どうして拒否したんだろう?ジェラルドと一緒になれば、彼女は自分が持っていないものを全て手にすることができる。そして彼は彼女を守ることができるのに。  あるいは、障害を持った彼の体では彼女を守ることができないと、本当に疑っているのだろうか。  いや違う、ミランダはそのことについても嘘をついたことが、彼には分かっていた。  ジェラルドの行きたい場所は明らかだった。旧館を探し、屋敷のずっと奥へ入って行った。カーペットは古く、長い冬の匂いがして、壁掛けは中世の従者のように通路の脇に立っていた。  やっと、ファミリーチャペルに入る木のドアの前まで来た。覚えていたドアより何故か短くて狭かったが、まだ深い木目があり、年月とウッドスモークのために黒ずみ、鉄が打たれていた。  ドアを押して開けると、ギシギシと大きな音がした。祭壇の上の細いステンドグラスの窓から射している、色がついた光のために目がくらみ、室内の暗闇に目を合わせるのに少し時間がかかった。四本の柱が直立不動の姿勢で立ち、繊細な丸天井に向かって広がっていた。わずかな風通しがあるだけの小さいチャペルなので、木のベンチはまるで床に押し込められているように見えた。  そして前の方にいたウィンウッド夫人は、振り向いて彼を見た。ジェラルドは彼女を見るなり、自分は彼女を必要としていることが分かった。はっきり説明することはできない。だが彼女を見つけるために、ここに来たのだった。  ウィンウッド夫人は立ち上がり、ジェラルドのところまで来て、その手を取った。「ねえあなた、こっちに来て座らない?」  ジェラルドは彼女と一緒に一列目のベンチに座り、松葉杖をそこに立てかけた。しかしここに来た今、言葉が出なかった。チャペルの静けさが骨に浸み込んできたが...

【独身淑女のクリスマス】 第17章

→ 作品ページにもどる 第17章 十二月三十一日  子供達はひどい状態だった。ミランダ、ミス・ティール、そしてベルモア家のその他のナーサリーメイド達は、彼らを落ち着かせるために今にも足元でぐるぐる縛り付け始めそうなほど、忍耐の限界に来ていた。  だから、ミランダは下の装飾庭園でかくれんぼをしようと提案した。ミス・ティールはそれに反論しなかったが、他のナーサリーメイド達は、子供達を外へ連れ出す前に着込ませないといけない手間を考えて、反対した。しかし、子供達はミランダの案に乗り気だった。庭は壁で囲まれているので、監督する必要はほとんどなく、子供達は自分達で遊ぶことができるというミランダの意見に、メイド達はやっと納得した。  ウィントレルホールにある上と下の装飾庭園は、壁に囲まれた大きな庭園だった。下の庭園の端に位置する門から出入りするようになっていて、上の庭園の方が小さく、二つの庭園を隔てた壁にある石のアーチを通って行き来するようになっていた。  下の庭園には子供達が隠れる場所が多く、ミス・ティールと二人のナーサリーメイドが門のところに立って、子供達が見えないところへ行かないよう見ていた。ミランダは、曲がりくねった小道を通ってアーチ道まで歩いた。  一年のこの時期、上の庭園は殺風景で、葉が落ちた木々が雪に覆われ、小石が敷かれた歩道にはやせ細った藪が並んでいるだけだった。まるでミランダの憂鬱な気分と同じ——彼女は壁に沿う凍った石のベンチに腰掛け、ただ空間を見つめていた。春には花々が我先にと咲くのだが、今日は横たわり眠っている。  高い石の壁を超え、また開いたアーチ道を通り抜け、子供達の甲高い声と笑い声が漂ってきて、氷に覆われた石の上で妙にこだましていた。鋭い空気が鼻と肺に噛み付いてくるようだったが、その痛みが何故か心地よかった。  二十年前に取った自暴自棄の行為——ついにその報いを受ける時がきた。責められるのは自分以外の何者でもない。  ミランダは心から恐怖を感じていた。 「ああ、神様」彼女の唇から漏れたその叫び——その柔らかい響きは湿った雪のようだった。ローラおばさんは主の存在を確信しているが、ミランダは庭でたった一人。今までの人生の中で、主が近くにいると感じたことは一度もなく、今もそれは変わらなかった。全能の神とそのような交...

【独身淑女のクリスマス】 第16章

→ 作品ページにもどる 第16章 十二月三十日  新しい湿布を貼っている間ずっと、寝室の壁を眺めているのに飽きたジェラルドは、マドックスが湿布をはがした後、足を伸ばしに出て行った。  応接間は肉が詰まったミートパイのように人が溢れ、若い女性達が翌日の大晦日に開かれる夕食会用のドレスのことでおしゃべりしていた。ジェラルドはこっそり戸口を通り過ぎ、子供達の笑い声が聞こえる音楽室の方へ向かった。  ほぼ一年中、ウィントレルホールのダンスフロアは、片側が音楽室、反対側が物置として使われており、絵が描かれた屏風で仕切られていた。部屋に入って初めて、自分がミランダに会えることを期待しているのに気付いたが、ピアノのところには家庭教師がいて、少女らがダンスのステップを習っていた。驚いたことに、教えていたのは彼の母で、足の動きや手の握り方を指導しており、笑い声とともにその顔は輝いていた。開いた戸口に息子を見つけると、微笑んだ。 「ああ良かった」母が言った。「ジェラルドが弾いてくれるから、ミス・ティールは女の子達に教えられるわね」 「僕ですか?」声が裏返ってしまったのが恥ずかしかった。「マダム、もう何年もピアノを弾いてないんですが」 「そんな完璧じゃなくていいの。ちょっと軽く弾いてくれたらいいのよ、女の子達がステップの練習ができるようにね。ゆっくり弾いてくれた方がいいわ」  身動きが取れなくなったジェラルドは松葉杖を取り、わざとゆっくりピアノの方に向かった。近くの椅子に松葉杖を置いて、腰掛けた。家庭教師のミス・ティールは、とてもシンプルな繰り返しのメロディーを弾いていたので、それほど難しい楽譜を弾く必要はないようだった。  ゆっくり、完全に滅茶苦茶な指使いで、荒れた海を進んで行く船のように和音を叩き始めた。しかし、四苦八苦してメロディーを二回繰り返したら、よろよろせずに指が動くようになり、ミス・ティールが弾いていた速度の半分ぐらいの速さで弾くことができるようになった。少女達がクルクルと舞い、自分達の間違いを見てクスクス笑っているのを見るのは意外と楽しかった。  音楽室へ入るドアが開き、ミランダが見えた。その目はジェラルドの目と合い、一瞬キラリと光った後、逸れた。  ジェラルドは、彼女と二人だけで会う時間を持てずにいた。少なくとも、勇気を奮...

【独身淑女のクリスマス】 第15章

→ 作品ページにもどる 第15章 夕食のために着替える時間を知らせるベルは既に鳴ったが、ウィンウッド夫人ことローラは何か気になることがあったのか、自分の寝室を通り過ぎて、屋敷の旧館につながる階段を昇って行った。子供の頃からよく知っている、階段から通路、そしてまた階段へと、常に登っていく曲がりくねったルートを辿った。最後の細い階段の上で、ドアを開けるのに苦労したが、肩で押したらやっと開き、ウィントレルホールの屋根の上に出た。  ずっと下にある大きな玄関広間まで光が差すようにスリットガラスが入ったレンガの丸屋根には、側面に二つの小塔があり、そのうち一つにドアが付いていて、ローラはそこから外に出たのだった。これほど高いと風がとても強かったが、毛皮の襟がついたマントを着ていたし、新鮮な冷たい空気のおかげで目が覚め、生き生きとした気分になった。  レンガの欄干が丸屋根を取り囲んでいて、ローラはその隙間を通り抜け、周りを歩いて田舎の景色を見ようとした。今朝、子供達が雪合戦をした前庭の芝生の雪に残った足跡が見えた。遠くでは、雪がかかった木々がきらめき、枝から氷が落ちていた。さらに遠くの方では、四角い形の放牧地が低木で区切られ、川は黒みがかった線のように見えていた。  ローラは空想にふけった。寒さが頬を刺すようだったが、景色があまりに美しいので戻るのが惜しまれ、それにこの心地よい平和、ずっとそこに浸っていたいほどだった。  だがその時、ドアが開く音がして振り向くと、ミランダが屋根の上に出てきた。  その目は——何ということか、その目は死んでいるようだった。  ミランダは戻ろうとしたが、ローラはその手を掴んだ。「いらっしゃい。一緒に景色を楽しみましょう」  ミランダがしばらくためらっていたので、ローラは彼女が自分の提案に合意するかどうかが分からなかった。しかし、ゆっくりと欄干の隙間を通り抜けてきて、ローラの隣に立った。 「お邪魔する気はなかったんです」ミランダは言った。 「そんなことはないわよ」 「一回目のベルはもう鳴りましたから」 「そうね、知ってるわ、だけど……」ローラは深呼吸した。「みんなあなたのせいね」 「私ですか?」緑色の目は、ローズオレンジ色の光の中でくり色に見えた。 「あなたはとても落ち着いてるわ、ミランダ、そ...

【独身淑女のクリスマス】 第14章

→ 作品ページにもどる 第14章 ジェラルドは、全くと言っていいほどその下男に気が付かなかった。気が散っていたからだと言いたかったが、本当は、マイケルがうまくやっていたからだった。  ミランダが行ってしまった後、外は寒すぎたので、ジェラルドは心地よい暖炉のそばでお茶を一杯、と考えた。おまけにウィスキーもちょっと入れようか。しかし、下男らが音楽室から椅子を運び出していたために、寝室に行く方向は遮られていた。彼らは応接間に向かっていて、ジェラルドは今晩の客用に余分の椅子が必要になったのかと推測した。フェリシティが豪華な夕食会を計画していたのだ。  下男が一人、ジェラルドのそばを通ったのだが、他人の制服を着ているのではないかと思われるほど似合っていなかった。最初、その下男の顔は完全に知らない顔だった。すると突然、その召使いは青緑色の目をジェラルドに向け、ウィンクした。  ジェラルドは歯ぎしりをした。  ゆっくり廊下を進み、音楽室を過ぎて寝室に向かった。寝室のドアのところで立ち止まり、待った。  執事は、下男らが静かに歩き回るのを立って監視していた。問題の人物である下男は応接間を出て、もっと椅子を取りに音楽室に戻ったが、ジェラルドは自分の寝室へ入る前に、彼をキッと睨んでこちらへ来るようにと合図をした。そして暖炉の前に腰を落ち着かせ、待った。  数秒後にドアを引っ掻くような音がした。「どうぞ」ジェラルドは大声で言った。 「ご機嫌斜めだね」部屋に入りながらマイケルは言って、ドアを閉めた。ジェラルドが最初に見た妙な召使いではなく、突然いつものマイケルに戻っていた。 「何で君がその制服を着てる?」ジェラルドが詰問した。  マイケルは袖を引っ張りながら、無実を装った。「あれは明らさまだよ。仕事中に話しかけるなんて、僕をクビにしたいのか」 「召使いのふりをして忍び込むなんて、危険すぎる」ジェラルドは言った。「君が着いた時に話し合っただろ」 「ずっと村の行商人のふりをしてたら、君を守れないよ」マイケルが言った。 「僕の父——君の叔父——に見抜かれてたかもしれないよ、バカだな」  マイケルはジェラルドを凝視した。「君は分からなかったじゃないか。それに、フランスでのあの日のことを忘れたっていうのか。君のお父さんだったら間違いなくだま...

【独身淑女のクリスマス】 第13章

→ 作品ページにもどる 第13章 十二月二十九日  彼女は彼のスカーフを巻いていた。  ジェラルドは屋敷の南側にあるポーチを通り抜けて、氷で覆われた石の上に注意深く松葉杖を置いた。昨晩数インチほどの雪が降ったので、子供達は南側の芝生の上で雪合戦をしていた。ミランダは敷石のテラスの端にあるベンチに腰掛けていて、首に巻いた赤と黒のスカーフが向こう側の雪景色に明るい色を添えていた。  振り向くと、ジェラルドが家を出て行くのが見えた。ミランダの顔は青白く、一瞬何か心配しているように見えた。そして、ジェラルドの不安を鎮めるよう風と波に命令するかのように、小さく笑った。空気は鼻と肺に食い込むように冷たかったが、ジェラルドはそれでも、降ったばかりの雪や、もみとウッドスモークの澄んだ香りを大いに楽しんだ。  ミランダは立ち上がり、彼の方へ歩いて行った。「休んでないとダメよ」 「君こそ休んだら?僕のことで文句を言う前に」ジェラルドが言った。 「文句は言ってないけど」目にシワがよった。「それに怪我もしてないし」 「昨日また襲われたんだよ、僕もそう」力が入りすぎて、続ける前に息継ぎをした。「本当に怖かった」  かすかな感情がミランダの顔に現れた。それを見てジェラルドは、キャンディー店の窓ガラスに鼻をくっつけている子供を思い出した。その感情が去ると、彼女はいつもの冷静で頼りになるミランダに戻った。 「座って」ベンチを指差した。「雪を払ったから」  ミランダは、敷石の端まで歩くジェラルドの隣を歩いた。「ミランダ」低い声で言った。「一人で座ってちゃいけないよ。危ないから——あいつらは君が目当てだ」  ミランダは何も言わなかった。頭を落としていたので、ジェラルドはボンネットの向こう側にある彼女の顔が見えなかった。 「ミランダ、この話を避けることはできないんだよ」  まだ返事がない。  ジェラルドはため息をついた。「話したくないんだったら、君が避けたがってるもう一つの話題に変えよう」 「お願いだからやめて」彼を見た彼女の頬が赤くなっている。  それを見たら、また彼女にキスしたくなった。  しかし、またそっぽを向いてボンネットで顔を隠したので、チャンスがなくなった。「私たちが襲われたことについて、みんな噂話をしてるわ。慎重に...

【独身淑女のクリスマス】 第11章

→ 作品ページにもどる 第11章 十二月二十七日  夕食が終わって子供達を寝かしつけた後、ミランダが応接間に入ると、奥の方にいるジェラルドがすぐに見えた。混雑した部屋でも必ず見つけることができる。だから、一日中彼が何かに気を取られているのが分かっていた。  二人を襲撃した男がまだ見つかっていないのは深刻な状況どころではなく、挫折以上のものだった。ジェラルドの目には活気がなく、顎に沿って更に緊張が増しているようだったので、ミランダは心配になった。まるで、体の痛みを超える深い苦痛を感じているように見えた。  その夜、燃え盛る暖炉の火の前で多くの者がシャレード(ジェスチャー遊び)をしている間、彼は母親と一緒に座っていた。母はゲームをする者たちの滑稽なしぐさを見て笑っていたが、ジェラルドはほとんど彼らを見ていなかった。怒りでこわばっているほどではないが、厳しい顔つきをしていた。母親が時々話しかけていたが、おそらく異なる理由のために、二人とも苛立っているのがミランダには明らかだった。  ミランダはこんなジェラルドを見たことがなかったが、冷酷無情の船長として船に乗る彼はこんな表情をしていたのだろうか、と想像してみた。  ミランダは部屋を横切った。「ミセス・フォーモントは音楽がお好きですよね。新しいグリークラブに参加しませんか?」年配のメンバーがピアノの周りに集まって歌っていた。「私でよければ、ジェラルドと一緒に座りますよ」 「ナーサリーメイドは要らないよ」ジェラルドは言い返した。 「私はナーサリーメイドなんだけど、どう答えたらいいのかしら」ミランダは愛らしく言った。  ジェラルドは彼女をにらんだが、さっきより苛立ちは和らいでいた。  母親は口をぽかんと開け、まずミランダ、そしてジェラルドを見た。母は数秒驚いていたが、すぐに言った。「必要ないわ、ミランダ。息子は私の責任だから」  母の冷たい言葉のために、ジェラルドは目を背けた。  ミセス・フォーモントは、これまでミランダに対して決して無愛想ではなかったが、ミランダがエリーに同伴することに抵抗しているせいか、少し距離を置いているように思われた。しかし原因が何であれ、また結果が何であれ、ミランダは、ジェラルドが荒れた気性に飲み込まれるままにしておくことはできなかった。昨日、口出しし...

【独身淑女のクリスマス】 第10章

→ 作品ページにもどる 第10章 十二月二十六日  襲撃された翌日、ジェラルドは足全体に刺すような痛みを感じて、朝早く目が覚めた。膝がクリスマスのプリンのように大きく腫れ上がってズキズキするので、夜中に何度も起こされた。  これまでも決して素直な患者ではなかったが、負傷してからは、いつもクマいじめにあっているクマのような気分で、大声で吠えたくなることがよくあった。父の従者であるマドックスがいつもより早い時間に寝室に入ってきたのは、このように不機嫌になっていた時だった。ジェラルドは感謝するべきなのに、膝の苦痛が体中を駆け巡って頭まで回り、目玉の裏で激怒していた。 「何だよ」ジェラルドは問いただした。 「ミス・ミランダがよこしてくださった湿布を持って参りました、ご主人様」 「要らないよ」頑固に言った。膝の痛みを和らげるために何かするべきなのは分かっているが、せめて苦しんでいる時は一人にしておいてもらいたかった。 「朝早く起きて、準備してくださったようですよ」主人の癇癪を無視してマドックスは言った。 「分かったよ」  従者はシーツをたたみ、ジェラルドの寝間着を丁寧に巻き上げて膝を出した。冷たい空気のために、怪我をしている方の足がシューっと音を立てて怒っているようだった。それからマドックスは、布に入れた包みを取り、ジェラルドの素肌にあてた。 「マドックス、氷じゃないか!」ジェラルドは叫んだ。「湿布っていうのは温かいものだろう」 「ミス・ミランダがくださったものですよ、ご主人様」  不快感のため機嫌は全く直らなかったが、マドックスが湿布をはがした後、少し気分がよくなった。 「朝ごはんをお持ちしましょうか、ご主人様?」 「結構だ、一日中寝間着でゴロゴロしていたくないからね」  従者は目をぐるりと回して呆れた様子を見せるようなことはせず、明らかに主人の息子はお尻をピシャリと叩かれても当たり前、という表情をしていた。「分かりました、ご主人様」  しかし、ベッドから鏡台まで歩こうとした時、かろうじて暖炉の前の椅子までたどり着いたものの、膝がズキズキして顔に汗が流れてきた。杖はもはや支えとして十分ではないことに気付き、部屋の向こう側に放り投げたい気分だったが、それを取り戻そうと思ったら、這って取りに行かなくてはならなく...

【独身淑女のクリスマス】 第9章

→ 作品ページにもどる 第9章 はじめミランダは、あまりの驚きと錯乱状態のためにものを考えることができず、ただ感覚のみがあるようだった。極上のウールの上着が頬に当たり、腰に当てた手と、背中にはもう片方の手がぴったり押し付けられていた。ミント、そして何故だか荒々しい海の匂い。  廊下の向こう側のダンスフロアに続く開いたドアから、女性達の笑い声が突然湧き上がり、二人は飛ぶようにして離れた。彼の腕の中にいなくても、ミランダはまだ……しっかりと包まれているように感じた。  彼に自分の顔を見せることはできない。長い間この家にいることで引っ掻き傷ができ、本当の自分という解けた糸を必死につかもうとする苦痛に満ちた顔。 「どうしたの?ミランダ」  彼女はただ頭を振っただけだった。  陽気な笑い声をのせて、軽快な調子の音楽がダンスフロアから流れてきた。家族や隣人がダンスを楽しんでいる間、この廊下に立っている自分がこれほど浮世離れしていると感じたことはなかった。不幸なわけではなかったが、このような社交は彼女の趣味ではない。変わり者で、どこにも属する場所がなかった。  ジェラルドは杖を取り、ミランダの手をつかんで引っ張りながら、ダンスホールから離れた方向へと廊下を進んで行った。 「一体何?」小声で言った。 「君も僕も、あんなところにはいたくない」開いた戸口の方を指すために頭を後ろに向けながらジェラルドは言い、ミランダはその声に鋭い苦痛を感じ取った。少し前にダンスホールで彼を見かけたときは、明らかに一緒にいた二人の女性に苛立っていたが、その目は逸れてダンスフロアを見つめていた。十四歳の頃も、ベルモアのいとこたちとダンスフロアを跳ね回るのが大好きだった。ミス・チャーチプラットンやミス・バーンズと座っているだけというのは色々な意味で辛いだろうと、ミランダは察した。  だから、後ろ側にある召使い用の階段に向かう廊下へと連れて行かれるのを許した。彼らは脇のドアから出て、家を離れて整形庭園に向かった。  夜空は暗く、新月が出ていたが、フェリシティは手さげランプとトーチを配置して、庭を照らしていた。おそらくゲストが恥ずべき行為を取らないように、暗い隅を照らそうとしたのだろう。過熱したダンスホールから敢えて出てくる人には空気が冷たすぎるので、フェリシティの...

【独身淑女のクリスマス】 第8章

→ 作品ページにもどる 第8章 ジェラルドは途方に暮れていた。あまりにも無力で、彼女のために何をしてあげることもできない。  彼らに向かって怒鳴りつけ、ミランダを笑い者にするのをやめろと言いたかった。あるいは彼女のところまで行って手を取り、食堂の外に連れ出したかった。しかしそんなことをしたら、彼女がもっと笑い者にされるだけだ。  ミランダの目の中に苦痛が見えたが、その顔は平静心の仮面で覆われていった。その瞬間まで、それが仮面であったことがよく分かっていなかった。  ミランダのことで、知らないことは沢山ありすぎた。知りたくなかったことも沢山あった。  今は、その全てを知りたかった。  今すぐということではない。まず、この忌まわしい杖がなくてもちゃんと歩くことができなくては。もう一度健康になりたい、そして自立し、自尊心というものを取り戻したい。  そしてこの瞬間、耳から血が流れ出す前に、両側にいる二人のおしゃべりな女から何とか逃げ出したかった。  ジェラルドはダンスホールの隅に座っていて、カップル達はカントリー・ダンスの旋律に合わせて揺れていた。壁に掛けられた緑樹の花輪は部屋に森の香りを添え、その中で召使い達は、ワッセル酒、パンチ、ワインの入ったカップを持って歩き回っていた。地域の者がみな招かれて、ベルモア家での年に一度のクリスマス舞踏会に来ていたのだ。  しかし、彼の隣に座っていた二人の女性はダンスに興味がないようだった。ミス・チャーチプラットンはチャーミングだが、会話は常に自分のことか、何か自分に関係のあることばかり。ミス・バーンズはそれほど自己中心的ではないが、ジェラルドの人生や趣味について彼を質問攻めにし、彼がしてきたことを全て褒め称えた。  ジェラルドは、どちらを向いても身動きが取れない。昔はダンスが好きで、すごく上手な訳ではなかったが楽しかった。見ているだけのダンスは全く楽しくない。  膝が痛み、「行き場がない」ことを思い出した。 「ひどい混雑ね」ミス・チャーチプラットンは言った。「客が多いとフェリシティは大喜びかもしれないけど、私はもっと小さくて人を選んだパーティーの方が好きだわ」 「舞踏会に行かれたことあります?キャプテン・フォーモント」ミス・バーンズが尋ねた。「きっと大人気だったんでしょうね」 ...

【独身淑女のクリスマス】 第7章

→ 作品ページにもどる 第7章 十二月二十五日 「かわいいわ」エリーはミランダに言った。 「ありがとう」ミランダは、ミス・ティールの部屋の壁にかかった小さい鏡の前に立って、黒髪をピンでとめていた。細く編んだ髪の毛を、更に簡単なパターンで巻くと、一見複雑に編んでいるように見えた。  今夜もまた、舞踏会の前に家族全員が一緒に食事をするので、ミス・ティールは既に着替えを済ませ、年長の女子生徒がトイレを済ませるのを手伝っていた。普段のミランダは、自分の服装のことなどほとんど気にしないのだが、今夜は……いつもと違うように見せたかった。その理由は全くないと分かっていたのだが。  着るものが沢山あるということでもなかった。両親と暮らしていた頃、彼らはパーティーや舞踏会に出かけたものだったが、ミランダはいつも一緒に行く訳ではなかった。混雑した部屋にいると息が苦しくなり、普段より更に退屈な会話しかできなくなった。だから、その当時も持ち衣装は少なかった。今持っているイブニングドレスは二着だけ、昨晩着た濃いブルーのドレスと、このドレスだった。  このドレスの方が気に入っていた。最近流行らなくなったふくらみのあるスタイルで、母が着なくなった淡い緑色のシルクのドレスを自分で仕立て直したのだった。エメラルドグリーンのリボンで縁取りをし、繊細な金色の葉のパターンで布地に刺繍を入れた。古いドレスで、ミランダが望んでいたほどピッタリ合う訳ではなかったが、刺繍の出来栄えは気に入っていて、スカートが膝の辺りでシュッと音を立てるのも女らしくて嬉しかった。 「そろそろ返してもらえるかしら、いたずらっ娘さん」着替えている間に使わせてあげていたネックレスを、エリーの首から外した。もともと母が持っていた頃は本物のエメラルドだったのだが、資金繰りが厳しくなって宝石を売り、ペーストに置き換えられた。ペーストストーンは色が不自然で、取り付けもよくないが、自分の目の色と合うので好きだった。  他人に良い印象を与えようとするべきではないと、またミランダは自分に言い聞かせようとした。他人に心を開こうとしないのだから、自分の容貌に対するジェラルドの意見には少しも関心がない。これまでに自分を理解してくれた人は一人もいなかったし、自分のことで、明るみに出ると困ることは山ほどある。  自分はい...

【独身淑女のクリスマス】 第6章

→ 作品ページにもどる 第6章 ジェラルドは、笑顔に見せかけようと口を横に大きく引っ張って、ミス・チャーチプラットンにモミの枝を渡した。 「ああキャプテン・フォーモント、本当に足は痛くありませんか?」彼女は青い目が引き立つような、感傷的な表情を見せた。 「ミス・チャーチプラットン、私は本当に大丈夫です」ジェラルドは膝の痛みを無視した。 「手伝ってくださるのは助かりますが、また怪我をされると困りますわ」  自分の動きが注目されないように、足を伸ばそうとした。今朝、森で起こった出来事による痛みは、ほとんどなくなっていた。動きが少し遅く、ハシゴに登ってシャンデリアを飾り付けることはできなかったが、緑樹を集め、家の周りに並べる女たちに届けることは十分にできた。運が悪いことに、もっと緑樹が必要だと言ってひっきりなしにジェラルドを呼ぶのはミス・チャーチプラットンだった。 「キャプテン・フォーモント、あなたに言っておかなくては」ミス・チャーチプラットンは、モミの枝の周りにリボンとツタを一本巻きながら言った。「恐ろしいほど足を引きずって家に入ってこられたのを見て、驚きましたのよ」  あの騒ぎは思い出したくもなかった。その上、男子生徒が声を限りに叫びながら出入り口の広間で追いかけっこをし、ジブシーが森で子供達を襲うと言ってミセス・オーガスタ・ハザウェイが金切り声を出している……エリーの泣き声は、家に戻る頃にはすすり泣きに変わっていたが、騒々しいのでまた泣き出してしまった。ジェラルドはミランダと話したかったのだが、彼女の近くに行くことができないでいた。 「本当に大変でしたわね」  ミス・チャーチプラットンがジェラルドのことで騒いでいるのには閉口したが、彼女は単純に心配しているだけなのだと、ジェラルドは自分に言い聞かせようとした。 「だって、あなたが男性方とユールログを取りに行くのではなく、緑樹を取りに行かれることが分かっていたら、私も皆さんと一緒に行きましたのに」ミス・チャーチプラットンが言った。  彼女が今朝の緑樹グループに参加しなかったことについて、ジェラルドは密かに安堵していた。そもそも子供達に付き添う気があるはずがないと疑っていたから。 「気が狂った女からあなたを守って差し上げることができたかもしれません」と笑って大きなエクボ...

【独身淑女のクリスマス】 第5章

→ 作品ページにもどる 第5章 ミランダにとって、屋敷の飾り付けのためにクリスマス用の緑樹を集めるのはいい気晴らしだった。みんなウキウキした気分だったし、自分のことを気に留める人は誰もいない。落ち着くことができた。  ジェラルドの母への頼みごとのために、彼が労力を費やすはずはないと思っていたので、この道は閉ざされるだろうと予想していた。だが、ローラおばさんに助けを求めるという彼の行為に驚かされたばかりか、胸の中に希望の花が咲いた。  希望を持つべきではない。いつも失望に終わったではないか。  でも、自分をサポートしてくれる人が二人もいるのに、希望を持たないでいられようか?両親には他人に頼らないことを教えられたので、このような心遣いを受けることに慣れていなかった。  オーガスタおばさんに頼むのは特に難しく、セシールの好意に対する感謝の気持ちがないことを咎められられただけに終わってしまった。そのように批判された後、ミランダは同じ頼みごとをローラに持ちかけるどころではなかった。しかし、ローラがこれほどまでに心配してくれて、ジェラルドも粘り強く助けになろうとしてくれることに驚かされた。  うまくジェラルドの母を説得してくれるのだろうか?それでも希望を抱くのが怖かった。  深呼吸をして、森の静けさの中で落ち着こうとした。木々からは、長い年月と忍耐、そして嵐や熱心な木こりにも負けない粘り強さが感じられた。今でも木々が互いにささやき合って、緑樹を集める女と子供たちの興奮気味なしゃべり声を聞きながらカサカサと噂話をしているのを想像した。  わずか一、二時間前と比べ、人生がこれほどまでに変わるとは。エリーと、そしてフォーモント一家と過ごした後、ローラおばさんのところへ行く——全てが素晴らしすぎて、夢のように溶けてなくなってしまうのではないだろうか。ベイティ家からも逃れられる。フェリシティのイライラにも、謙虚で感謝の心を持った扶養家族としての身の程をミランダに思い知らせようとする決意にも耐える必要がなくなる。  十二夜が終わったら、状況は本当に変わるのだろうか?長い間、幽霊のようにゆっくりともやの中に消えていくように感じていたので、想像するのが難しかった。自分は幸せになれるのだろうか。最後に幸せだと思ったのはいつだったのかさえ、思い出せなかった。...

【独身淑女のクリスマス】 第4章

→ 作品ページにもどる 第4章 十二月二十四日  夜が明けてピリッと身の引き締まるような寒い朝、恒例のクリスマス用の緑樹を集めるには申し分のない晴天だった。ウィンウッド夫人ことローラは、サリーの首にマフラーを巻き終えた。この少女は、前にローラがここウィントレルホールで会って以来、すっかり大きくなっていた。「はい、これでヤドリギを集めに行っていいわ」 「ウィリアムが、ヤドリギは大人のためだって言うのよ」 「ウィリアムって?」 「牧師先生の息子。サセックスのうちの近くのね」  ローラは笑って、少女のフードの下から顔をのぞかせている茶色の巻き毛を伸ばした。「ヤドリギはキッシング・バウだから、一応ウィリアムの言う通りね」  サリーは顔をしかめた。「どうして大人はキスばかりするの?大人がキスをすると、赤ちゃんができることがあるって、ウィリアムが言ってたわ」  ローラは吹き出しそうになるのをこらえた。「キスしただけじゃ赤ちゃんはできないのよ。だけど、大人が楽しんでキスをするのは確かね」  サリーは疑いの視線を向けた。「ローラおばさんはキスをするのが楽しい?」 「サリーにキスをするのは楽しいわ」ローラはサリーを抱きしめて、頬にキスの雨を降らせた。  サリーはキャーッと言ってクスクス笑った。「今度はポールにキスをする番よ」とローラに言った。 近くで手にミトンをはめようとしていたサリーのいとこは、嫌な顔をして数歩下がった。「僕はもう大きいからキスはできない。キスをするのは赤ちゃんだけだから」 「私だって赤ちゃんじゃないわ」 「君は一番年下のいとこ。君より若いいとこはいないから、赤ちゃんだよ」  サリーはローラの方を向いた。「ローラおばさん、赤ちゃんを産んでよ。そうしたら私が一番年下じゃなくなるから」  ローラは驚いた。無邪気な言葉から、これほど鋭い心の痛みを感じるとは。もう何年も経っているというのに。お腹の中でかすかな痛みを感じるのを想像してみた。そして、サリーに明るい笑顔で言った。「赤ちゃんにはパパが要るのよ。私は独身なの」 「ドライデールさんと結婚したら?」 「ダメよ、ドライデールさんと私は友達なのよ。あなたと牧師先生の息子のウィリアムのようにね。さあ、行きなさい」他のいとこたちが列を作って出て行ったので...