【ひとり寿司】第8章
→ 作品ページにもどる 第8章 カリフォルニアの服装規定はカジュアル。助かった。サンタナ・ローのクラスタシアン・レストランに入ると、レックスがはじめに抱いていた心配は、消えてなくなった。客の多くはジーンズ。だから彼女のシンプルな木綿のシャツは、場違いではない。 こんなにハンサムな男性と同席するなんて、何か特別な人になった気がした。ただ、品定めをする女性の眼差しに、ジョージは気がついているようだった。 「あの子たちのこと、知ってるんですか?」露出度の高い服を着て、まつ毛をパチパチさせ、くすくす笑っている女の子達に、レックスは会釈した。 ジョージは、注意をさっとレックスに戻した。「あ……いや」明るく、暖かい微笑みが光った。女の子達が彼の肩越しにため息をついているのが見えなければ、レックスはその微笑みに包み込まれるように感じたのかもしれない。(見たいだけ見ればいいわ、お嬢ちゃんたち。この人は私のデート相手よ) 彼はそうやって注目されるのを歓迎しているようだったが、「エペソ」のリスト五番め——「誠実さ」という問題を考えると、幸先が良くない。まあ、食事が終わるまで、このリストとジョージを比較することにしよう。 レックスはメニューをさっと見たが、食べたいものはもう決まっていた。いつもと同じものだ。 ジョージが顔を上げてレックスを見た。「カニ入りワンタンの前菜、一緒に食べない?」 「もちろん、おいしそうですね」リストに追加しよう。(私と同じぐらい美味しい食事を楽しむことができる人) ウエイトレスが、紗のような宝石をちりばめたベトナムの民族服を着て、(映画アラジンの)ジニーのようにテーブルに現れた。「ご注文はお決まりですか?」鈴が鳴るような声だ。 ジョージの目は、メニューからウエイトレスの顔まですっと上がるのではなく——そのスレンダーな曲線の上をゆっくりと動いていった。レックスはあごが引きつった。リストにある「誠実さ」を考えると、ツー・ストライク。このデートはすぐに終わるかもしれない。 「カニ入りワンタンはシェアします。それから、僕はシーザーサラダと、ガーリックでローストしたカニ入りのガーリックヌードル」 少なくとも、食べ物の趣味はいい。「私も同じものをお願いします」レックスは大きいメニューをウエイトレスに返した。 「君、ペア...