【ひとり寿司】第17章
→ 作品ページにもどる 第17章 「レックス。申し訳ない。数週間前に売り切れたんだよ」 気落ちした、一瞬だけ。「ロジャーさん、同窓会で持ってるブロックがよくありますよね。二枚だけ譲っていただけないでしょうか?」 「そうだねえ」ロジャーの声がゆっくりになった。「可能性はあるかもな」 やっぱり。「広告料を少し割引できるかもしれません」 「いや、広告は、もうあまり必要じゃないんだ」 (何だ)「ホームページにプレミアム・ストーリー、っていうのはどうですか? UWのことで強調したいのはどんなことですか?」 「野球チームは調子がいいんだが、席が埋まらないんだ」 「ホームページにストーリーを載せるのはどうでしょう」彼を引き寄せた。 「次の試合にスカウトが来てくれてもいいんだけどね」 分かった! 彼が探っていたのはこれだった。「SPZはスカウトにコネがありますよ」実際、今日は、ウェブサイトに載せられたばかりの高校チームのスタッツのことで、一〇人のスカウトから電話がかかってきた。 「レックス、チケットのことは、ちょっと他の人と話をさせてくれるかな。また電話するよ」 「ありがとうございます、ロジャーさん」電話を切った。有力者が取引を成立させたとき、またはストックブローカーがウォールストリートで成功したときの快感を、今では理解することができた。 レックスはウォーターボトルに手を伸ばした。空っぽだ。 音が鳴らない電話をチラリと見た。ロジャーからコールバックがある前に、水を補充する時間がある。ナルゲンボトルのフタを閉め、通路を通って冷水機の方へ向かった。 キュービクルに座っているグレイの長い足が通路に突き出しているので、それをよけた。サンノゼ州立大学の野球チームのことで、何か深刻なことを電話で話しているようだ。ブラウンのキュービクルからは、彼の声が流れてくる——多分、彼も電話中——ブラウンの足が通路に突き出るのが見えた時には——遅すぎた。 つまずきながら、腕が激しく揺れた。(パシッ!)ウォーターボトルが何か硬いものにあたった気がした。 「ウップ!」 手を突き出したが、薄い仕切りはダンのキュービクルに倒れた。(ゴン!)仕切りがダンの頭に当たる音がした。 「あうっ!」 レックスと仕切りが倒れた。仕切りがダンの...