【ひとり寿司】第34章
→ 作品ページにもどる 第34章 「ヘーイ、レックス、友達の——」 「今はやめて、リッチ」レックスは、ドアを押えてくれているリチャードと、その痩せた男「友達」を過ぎ、足を踏み鳴らして祖母の部屋の前まで行った。 「おいおい」リチャードは、彼女が過ぎていく前に腕をさっとつかんだ。 「おばあちゃんに挨拶しなきゃ」 「ジェンのお母さんと話してる。待ってくれるよ。それで、紹介するよ——」 「こんにちは」レックスは手を出した。ミスター・スキニーは、ベタベタした手でその手を握った。 「レックスです。リチャードが何て言ったか知らないけど、私は興味ないから」キッチンへ向かった。 「レックス」ありがたいことにミスター・スキニーを居間において、リチャードが追いかけてきた。 「頼むよ、今日だけは俺に優しくしてくれ。男の子の日だから」 「違う、五月五日は『こどもの日』よ。男の子の日じゃない。つまり、あなたに親切にする必要はないって意味。一体何なのよ。あんな人たちがあんたの男友達なの?」 「誰のことだよ」リチャードは、突然、リノリウム(床の材料)に魅力を感じ出したようだ。 「まるで男性エスコートサービスね」 「ええっ?」彼の男らしさをついた一撃が、明らかに彼を突き刺したようだ。「違う。俺は社交的なんだ。お前もちょっと見習ったほうがいいぞ」 「そこらの落伍者を紹介しといて、私に説教しよう、っていうの? どんな人なのか、ほとんど知りもしないくせに」 「そんなこと、どうして分かるんだよ? 親友かもしれないだろ」 「あなたの友達はみんな見てきた。あなたみたいな人ばかりよ。居間でミスター・スキニーと一緒に死にたくないでしょ? 叔父さんのバースデー・パーティの食いしん坊もそう、それに——」 「お前の女らしい感性に訴える繊細な奴を探そうとしてるんだよ」リチャードは手を上げて、胸を押さえた。「お前のためと思ってやってるんだ」 レックスは、面と向かって兄をあざ笑った。その朝、エイデンとケンカになって以来初めての、悲しくない感情だった。「他には?」 リチャードは急いで考えようとしたが、金魚のように口を大きく開けただけだった。 「考えてる間に、おばあちゃんに挨拶してくるわ。縁を切られそうだから」 ジェニファーの両親の家の奥にあ...