【独身淑女のクリスマス】 第18章
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ジェラルドは、やみくもに通路を下って行った。ミランダが投げつけた冷淡な言葉が彼女の本心ではないことは、分かっていた。ミランダは自分に無関心ではなかった。あのキスで本当の気持ちをさらけ出してくれた。
彼の安全を気遣って、ミランダは拒絶したんだろう。そう思うと、寒さが浸み込む手足が温まってきた。だから彼女は嘘をついたに違いない。
嘘をついたにしては、妙に上手だった。彼女は彼の目をまっすぐ見て、愛していないと言った。
どうして拒否したんだろう?ジェラルドと一緒になれば、彼女は自分が持っていないものを全て手にすることができる。そして彼は彼女を守ることができるのに。
あるいは、障害を持った彼の体では彼女を守ることができないと、本当に疑っているのだろうか。
いや違う、ミランダはそのことについても嘘をついたことが、彼には分かっていた。
ジェラルドの行きたい場所は明らかだった。旧館を探し、屋敷のずっと奥へ入って行った。カーペットは古く、長い冬の匂いがして、壁掛けは中世の従者のように通路の脇に立っていた。
やっと、ファミリーチャペルに入る木のドアの前まで来た。覚えていたドアより何故か短くて狭かったが、まだ深い木目があり、年月とウッドスモークのために黒ずみ、鉄が打たれていた。
ドアを押して開けると、ギシギシと大きな音がした。祭壇の上の細いステンドグラスの窓から射している、色がついた光のために目がくらみ、室内の暗闇に目を合わせるのに少し時間がかかった。四本の柱が直立不動の姿勢で立ち、繊細な丸天井に向かって広がっていた。わずかな風通しがあるだけの小さいチャペルなので、木のベンチはまるで床に押し込められているように見えた。
そして前の方にいたウィンウッド夫人は、振り向いて彼を見た。ジェラルドは彼女を見るなり、自分は彼女を必要としていることが分かった。はっきり説明することはできない。だが彼女を見つけるために、ここに来たのだった。
ウィンウッド夫人は立ち上がり、ジェラルドのところまで来て、その手を取った。「ねえあなた、こっちに来て座らない?」
ジェラルドは彼女と一緒に一列目のベンチに座り、松葉杖をそこに立てかけた。しかしここに来た今、言葉が出なかった。チャペルの静けさが骨に浸み込んできたが、彼は落ち着くどころか、一層無力さと弱さを感じるだけだった。
ウィンウッド夫人は数分間ジェラルドをそこに座らせた後、話し出した。「それで、私に打ち明けないの?」
「いろんなことがありすぎて、自分は男らしくないことが分かっただけです」
「そんなことはないわよ、ジェラルド」
「何のためにこうなったのか」ジェラルドが膝を掴むと、痛みが足を走った。「傲慢過ぎたのか、謙遜が必要だったのか。僕は裁かれなくちゃいけないことを、何かしたんでしょうか?」
「主はそういうやり方では罰を与えないわ」
「ですけど、主は僕がこのようになるのを許したんですよ」彼の問題の根源はそこにあった。負傷のため、元気な時のようにミランダを守ることができない。膝をもっと強く掴んだので、痛みが腿まで上がってきた。
ウィンウッド夫人はまっすぐ彼を見た。「全てのことには理由があるって誰もが思う。だけど本当は、全てのことには沢山の理由があるのよ」その手を彼の手に置き、硬くなった指の節をなでた。「膝のために、あなたは両親のところへ戻り、人生の新しい節目を迎えたの」
ミランダも同じようなことを言っていた。「でも、僕が望んでいる節目じゃなかったんです。それもこんなに早く。神様は何故僕をこのようにされたのかが知りたい」
彼女の顔はやつれ、その目の裏には、彼がこれまで見たことがなかった虚しさと恐怖が見えた。「行ったり来たりを繰り返す小道のようね」
ジェラルドは立ち上がって、祭壇の方へ足を引きずって行った。祭壇を覆うブロケード布はホコリにまみれていた。
「私にとってはね」ウィンウッド夫人が後ろから言った。「怒りは炎じゃなくて、溺れるようなもの。転げ回って問い続けるの、どうして自分なのかって。完全に疲れ果てるまでね」
彼女は正しいのかもしれない。何ヶ月もこの苦しみと共に生きてきたので、どうすれば苦しまずに生きられるのか、どうすれば魂の苦しみを和らげることができるのかが分からなくなっていた。
「僕はどうすればいいんでしょう」声の調子にトゲがあった。「祈るんですか?貧しい人に施し物をするとか?」
「静まるのよ」彼女は単にそう言った。
彼は振り向いて彼女を見た。その穏やかな表情からミランダを思い出したが、ウィンウッド夫人の重い眼差しは、過去の苦痛、辛い経験を通して学んだことを語っていた。
ジェラルドは祭壇に引き返し、指で布をつかんだ。「陸に上がって以来、静まることができないんです。船に乗っていた時の方が安らかだった。戦争中だったのに」
「戦争はあなたについて来なかったのよ、ジェラルド。陸では戦い方が違うの」
「男のキャリアを奪い、障害者にする神が何の役に立つんでしょうか?貧しい者や無力な者を救うことができない神なんて。誰も彼女のことを見ていない。誰も彼女のことを気にかけない。僕以外に……」
彼の叫び声は、二人の間の静けさを通り抜けて小さいチャペルの中でこだました。そんなことを言うのは不敬虔だが、心の中の辛い苦しみから這い上がってきた言葉だった。
カサっと布の音がしたと思ったら、ウィンウッド夫人が隣にいて、また彼の手を握った。「神様には見えてるのよ、彼女が」
ジェラルドは無言で頭を振った。どうして分かるんだろう?
「神様は、あなたのことも見えてるわよ」ウィンウッド夫人は言った。「どうして怪我をしたのかは分からないけど、神様があなたを癒すことができるってことは分かるわ」
船のビルジに入ってくる水のように、その考えが彼の心に浸み込んできた。回復することができる。「神はどうやってそんなことができるんでしょう?」
「分からない。多分、私達が理解することができない方法で。だけど、私はその癒しを感じたわ。ミランダの平安——彼女があなたを落ち着かせるやり方——神様の平安のようなものがあなたを癒すことができるのよ」
だけどミランダがいなくては、彼は平安でいられなかった。怒り、不満、苦痛——ジェラルド独特の罪深い三位一体だ。一体どうすれば、彼は癒されるのだろう?
しかし全能の神がいるのならば、その神がジェラルドを見ないことがあるのだろうか?ジェラルドに手を差し伸べないことがあるのだろうか?
ウィンウッド夫人は彼の肩を掴み、自分の方を向かせた。「このことでいつまでも戦い続けたいの?」
「いいえ」思っていたより確信を持った返事だった。
「愛するジェラルド」彼の頬に触った。「あなたが主イエス・キリストを信頼していなくても、私は信頼してるわ。いつか、主の平安であなたがまた幸せになれる日が来ると信じてる」
ジェラルドは答えなかった。チャペルに入った時と違うように感じるものは何もなかった。多分、彼の期待が高すぎるのだろう。ウィンウッド夫人との会話によって、今日は変わらなかった。そして、彼を苦しめているのは今日という日だった。
ウィンウッド夫人は通路を下り、チャペルを出た。ジェラルドはそこに残った。手で祭壇を掴み、答えもなく、何をすれば良いのか分からないまま。
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第18章
ジェラルドは、やみくもに通路を下って行った。ミランダが投げつけた冷淡な言葉が彼女の本心ではないことは、分かっていた。ミランダは自分に無関心ではなかった。あのキスで本当の気持ちをさらけ出してくれた。
彼の安全を気遣って、ミランダは拒絶したんだろう。そう思うと、寒さが浸み込む手足が温まってきた。だから彼女は嘘をついたに違いない。
嘘をついたにしては、妙に上手だった。彼女は彼の目をまっすぐ見て、愛していないと言った。
どうして拒否したんだろう?ジェラルドと一緒になれば、彼女は自分が持っていないものを全て手にすることができる。そして彼は彼女を守ることができるのに。
あるいは、障害を持った彼の体では彼女を守ることができないと、本当に疑っているのだろうか。
いや違う、ミランダはそのことについても嘘をついたことが、彼には分かっていた。
ジェラルドの行きたい場所は明らかだった。旧館を探し、屋敷のずっと奥へ入って行った。カーペットは古く、長い冬の匂いがして、壁掛けは中世の従者のように通路の脇に立っていた。
やっと、ファミリーチャペルに入る木のドアの前まで来た。覚えていたドアより何故か短くて狭かったが、まだ深い木目があり、年月とウッドスモークのために黒ずみ、鉄が打たれていた。
ドアを押して開けると、ギシギシと大きな音がした。祭壇の上の細いステンドグラスの窓から射している、色がついた光のために目がくらみ、室内の暗闇に目を合わせるのに少し時間がかかった。四本の柱が直立不動の姿勢で立ち、繊細な丸天井に向かって広がっていた。わずかな風通しがあるだけの小さいチャペルなので、木のベンチはまるで床に押し込められているように見えた。
そして前の方にいたウィンウッド夫人は、振り向いて彼を見た。ジェラルドは彼女を見るなり、自分は彼女を必要としていることが分かった。はっきり説明することはできない。だが彼女を見つけるために、ここに来たのだった。
ウィンウッド夫人は立ち上がり、ジェラルドのところまで来て、その手を取った。「ねえあなた、こっちに来て座らない?」
ジェラルドは彼女と一緒に一列目のベンチに座り、松葉杖をそこに立てかけた。しかしここに来た今、言葉が出なかった。チャペルの静けさが骨に浸み込んできたが、彼は落ち着くどころか、一層無力さと弱さを感じるだけだった。
ウィンウッド夫人は数分間ジェラルドをそこに座らせた後、話し出した。「それで、私に打ち明けないの?」
「いろんなことがありすぎて、自分は男らしくないことが分かっただけです」
「そんなことはないわよ、ジェラルド」
「何のためにこうなったのか」ジェラルドが膝を掴むと、痛みが足を走った。「傲慢過ぎたのか、謙遜が必要だったのか。僕は裁かれなくちゃいけないことを、何かしたんでしょうか?」
「主はそういうやり方では罰を与えないわ」
「ですけど、主は僕がこのようになるのを許したんですよ」彼の問題の根源はそこにあった。負傷のため、元気な時のようにミランダを守ることができない。膝をもっと強く掴んだので、痛みが腿まで上がってきた。
ウィンウッド夫人はまっすぐ彼を見た。「全てのことには理由があるって誰もが思う。だけど本当は、全てのことには沢山の理由があるのよ」その手を彼の手に置き、硬くなった指の節をなでた。「膝のために、あなたは両親のところへ戻り、人生の新しい節目を迎えたの」
ミランダも同じようなことを言っていた。「でも、僕が望んでいる節目じゃなかったんです。それもこんなに早く。神様は何故僕をこのようにされたのかが知りたい」
彼女の顔はやつれ、その目の裏には、彼がこれまで見たことがなかった虚しさと恐怖が見えた。「行ったり来たりを繰り返す小道のようね」
ジェラルドは立ち上がって、祭壇の方へ足を引きずって行った。祭壇を覆うブロケード布はホコリにまみれていた。
「私にとってはね」ウィンウッド夫人が後ろから言った。「怒りは炎じゃなくて、溺れるようなもの。転げ回って問い続けるの、どうして自分なのかって。完全に疲れ果てるまでね」
彼女は正しいのかもしれない。何ヶ月もこの苦しみと共に生きてきたので、どうすれば苦しまずに生きられるのか、どうすれば魂の苦しみを和らげることができるのかが分からなくなっていた。
「僕はどうすればいいんでしょう」声の調子にトゲがあった。「祈るんですか?貧しい人に施し物をするとか?」
「静まるのよ」彼女は単にそう言った。
彼は振り向いて彼女を見た。その穏やかな表情からミランダを思い出したが、ウィンウッド夫人の重い眼差しは、過去の苦痛、辛い経験を通して学んだことを語っていた。
ジェラルドは祭壇に引き返し、指で布をつかんだ。「陸に上がって以来、静まることができないんです。船に乗っていた時の方が安らかだった。戦争中だったのに」
「戦争はあなたについて来なかったのよ、ジェラルド。陸では戦い方が違うの」
「男のキャリアを奪い、障害者にする神が何の役に立つんでしょうか?貧しい者や無力な者を救うことができない神なんて。誰も彼女のことを見ていない。誰も彼女のことを気にかけない。僕以外に……」
彼の叫び声は、二人の間の静けさを通り抜けて小さいチャペルの中でこだました。そんなことを言うのは不敬虔だが、心の中の辛い苦しみから這い上がってきた言葉だった。
カサっと布の音がしたと思ったら、ウィンウッド夫人が隣にいて、また彼の手を握った。「神様には見えてるのよ、彼女が」
ジェラルドは無言で頭を振った。どうして分かるんだろう?
「神様は、あなたのことも見えてるわよ」ウィンウッド夫人は言った。「どうして怪我をしたのかは分からないけど、神様があなたを癒すことができるってことは分かるわ」
船のビルジに入ってくる水のように、その考えが彼の心に浸み込んできた。回復することができる。「神はどうやってそんなことができるんでしょう?」
「分からない。多分、私達が理解することができない方法で。だけど、私はその癒しを感じたわ。ミランダの平安——彼女があなたを落ち着かせるやり方——神様の平安のようなものがあなたを癒すことができるのよ」
だけどミランダがいなくては、彼は平安でいられなかった。怒り、不満、苦痛——ジェラルド独特の罪深い三位一体だ。一体どうすれば、彼は癒されるのだろう?
しかし全能の神がいるのならば、その神がジェラルドを見ないことがあるのだろうか?ジェラルドに手を差し伸べないことがあるのだろうか?
ウィンウッド夫人は彼の肩を掴み、自分の方を向かせた。「このことでいつまでも戦い続けたいの?」
「いいえ」思っていたより確信を持った返事だった。
「愛するジェラルド」彼の頬に触った。「あなたが主イエス・キリストを信頼していなくても、私は信頼してるわ。いつか、主の平安であなたがまた幸せになれる日が来ると信じてる」
ジェラルドは答えなかった。チャペルに入った時と違うように感じるものは何もなかった。多分、彼の期待が高すぎるのだろう。ウィンウッド夫人との会話によって、今日は変わらなかった。そして、彼を苦しめているのは今日という日だった。
ウィンウッド夫人は通路を下り、チャペルを出た。ジェラルドはそこに残った。手で祭壇を掴み、答えもなく、何をすれば良いのか分からないまま。
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