【独身淑女のクリスマス】 第19章
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エリーがいない。
ミランダは他の子供達を連れて下の庭園から既に戻っており、マントやスカーフ、帽子、ミトンを脱がせるのに大騒ぎだった。ナーサリーはあまり心地よくない濡れたウールの強い臭いがしていて、部屋の隅に押し込まれた松の枝が唯一新鮮な空気を放っていた。
大晦日の夕食会があるので、今日の子供達の夕食はいつもより時間が早かった。キッチンでは単に、子供達の夕食と、盛大なパーティーのための食事を同時に準備することができなかった。しかし食事の時間になると、エリーはどこにもいなかった。
ミランダは、ナーサリー棟や、あらゆるクローゼット、部屋の隅々を二十分ほど探し回った。誰もいない廊下でアンダーメイドのジーンが近づいてきた時には、本当に心配になり始めた。「エリーを見つけましたよ、ミス・ミランダ」
二日前に家族棟であった出来事以来、ミランダがジーンを見かけるのは初めてで、今ここに彼女が現れたことと、エリーがいないことで、ミランダの息は喉の中で凍りついた。「どこなの?」
「私についてきてください、ミス」
「パラダイスへ行く道を約束してくれるまで、あなたと一緒には行かないわ」
ジーンは、口と目のシワがよく見えるほど近くまで来てミランダを驚かせ、低い声で言った。「もう一度エリーに会いたいんだったら、私と一緒に来るのよ」
「エリーに何かあったら、私が何をするか分かるわよね」ミランダは暗い声で言った。
その言葉にジーンはドキッとして、淡い色の目を二、三回瞬きさせた。そして、その目は細くなった。「私と一緒に来なければ、彼女はひどく傷つきますよ」
ミランダは体が固くなるのを感じ、ジーンがマントを着ているのに気が付いた。「外に出るの?ちょっとマントを取りに行かせて」ジーンは単純に抵抗しているように見えたが、ミランダは付け加えた。「マントを取りに行かせてくれたら一人でそっと出て行くから」
ジーンは、ウールのマントを取りに行くミランダの後をついて寝室に入ってきた。ミランダがボンネットと、ジェラルドの黒と赤のスカーフも掴んだのを見ても、反対しなかった。そしてミランダは、ジーンの後をついて階段を降りた。
マイケルは夕食会の準備を手伝っているはずだった。二人は食堂かキッチンを通り抜けるだろうか?ミランダは彼の目に留まるだろうか?
しかし家族棟まで降りた後、二人は裏の階段から庭園に出た。召使い達はみな、ゲストの寝室で手伝っているか、夕食の準備をしていたので、誰もいなかった。
屋敷の南側の端に向かって曲がったが、芝生を横切らず、森との境界線に沿って歩いた。ジェラルドの寝室の窓は、反対側の方向に面していた。彼女が見えるはずはない。
風が強くなり、氷の剣のように薄いマントを突き刺した。しかしミランダの心臓は、もっと凍りついているように感じた。絶望とはこれほど冷たいものだろうか?
細長い森を通って短い小道に入り、小作人が使う砂利道に出た。古い旅馬車が五十ヤード先にとまっており、それを運転していたのは、庭園にいた時、そしてスケートパーティーの時に襲ってきた男の一人で、背が高い方のジェラルドを襲った男だった。
馬車が開くと、ミランダを連れ去ろうとした丸顔の男が降りてきた。彼は中にいる誰かにうなずいており、ハリエットが見えた。
ハリエットは優雅に馬車を降りた。きつい顔には深いシワがあったが、ボンネットの下から見える髪はまだ濃い茶色で美しかった。ミランダを見てその目は光ったが、微笑みはなかった。
「ランダ!」エリーの声が風に運ばれてきた。
「エリー!」急いで前に進むと、馬車の隅に座っているエリーが見えた。小さく、とても寒そうに見える。マントは着ているが、ミトンも帽子もない。
ミランダはハリエットに何も言う必要はなかった。ハリエットはエリーが馬車から降りるのを助け、荒々しくジーンの方に押した。そしてメイドに皮の小袋を投げると、チャリンという音がした。「ありがとう、ジーン」ハリエットの声は低く、きつかったが、男には色気があるように聞こえるのだろう。
ハリエットはミランダに何の命令も出さず、ただ憂鬱そうに見つめ、待っていた。
ハリエットの沈黙が妙に怖かった。ミランダは馬車に乗り込み、ハリエットと男がそれに続いた。一瞬のうちに彼らは動き出し、ウィントレルホールを後にした。
「死んだと思ってたわ」ミランダはハリエットに言った。
「あなたはそれを望んでたんでしょうね」ハリエットは刺繍が入ったマントの端をぼんやりと触っていた。高い生地ではないが、質は良かった。手袋と、ベルベットのリボンの縁取りがついたボンネットも。どうやら、噂されたように哀れな売春婦として死んだわけではなく、恐らく誰か得意客を見つけたんだろう。ジーンと、多分この男達を雇い、この旅馬車を借りるお金があるんだから。
「どこに連れて行くつもり?」
「ロンドン」ハリエットはアクビを抑えた。
「私を殺すためにロンドンまで連れて行くの?」
ミランダはやっとハリエットに注意を向けさせることができた。「あなたを殺す?とんでもない。ただあなたを殺すためにこんな時間とお金を使ったんじゃないわ。あなたに紹介状もなく辞めさせられた後、私が追いやられた場所へあなたを投げ込むのよ」
「あなたは紹介状をもらう価値がなかったわ」ミランダははっきりと言った。
「私が通ってきた試練に値することは何もしてない」ハリエットはささやいた。「だけどあなたはそうなって当然」
「どうして——」
「黙らないと、トッジにあなたの舌を切り落としてもらうわよ」ハリエットは向かいの男にうなずいた。男は三日前、ミランダに指を突っ込まれたので、まだ少し腫れている細い目で彼女を見た。
一マイルほど無言のまま進んだ。道の両側が森林区域であるのを見て、ミランダはベルモアの領地を出ようとしていることが分かった。
ミランダは、公道にくぼみがあるため速度を落とさなくてはならない場所を正確に知っていた。
靴に入った石を取り除こうとするかのように前かがみになり、馬車の床から泥と藁を両手で掴み、トッジの目に投げつけた。そしてドアの取っ手を掴み、動く馬車から身を投げ出した。
肩を強く打って着地し、道路の脇で地面を転がった。歯がガタガタ鳴るほど強く木の根元にぶつかったが、息つく間もなかった。立ち上がり、スカーフを喉からはぎ取って放り投げ、森の中へ飛び込んだ。
マントが後ろではためいた。枝や茂みに引っかからないように、後ろに手を伸ばしてマントを掴み、近くに寄せた。風がボンネットを捉え、喉でリボンが引っ張られる。リボンを緩めると、ボンネットは頭から飛んで行った。寒いが、周りがよく見えていい。
後ろの方で、低木の間をガサガサと激しく動く音がした。ミランダは曲がりくねる道に並ぶ木々の周りを素早く動き、その音はだんだん弱くなっていった。
隠れる方法を見つけなくては。どうすればいいだろう?
ああ、ジェラルド。だけどジェラルドは彼女が見えるはずがない。
神様お願い、助けて!
走っている時は周りの木々に気がつかなかったが、突然、昔いとこ達と木登りを楽しんだ、古くて大きなオークのように見える懐かしい木を見つけた。ロビンフッドの愉快な群れのように、不用心な旅行者に飛びかかろうと待ち構えていたものだった。一番低い大枝には手が届かなかったのだが、倒れた木の大きな幹がちょうど根元に埋もれていて、それに乗れば手が届いたので、彼らがお気に入りの木だった。
テーブルより高い、倒れた木の幹に、スカートを引き上げてよじ登った。怪我をした肩が痛むので歯を食いしばり、その幹からまっすぐ空中に突き出している尖った枝を掴んでまっすぐ立った。倒れた木の幹の上に立ったミランダは、古いオークの一番低い大枝に手を伸ばした。今では彼女の顎の高さしかないので、軽く飛べば乗れた。ジェラルドについて行こうとした十二歳の頃と比べて体は柔らかくない。動くたびに肩に痛みが走り、重いスカートも邪魔だが、足を振り上げながら枝をまたいでひたすら登り続けた。
枝は密集しており、巨大な幹から外に向かって伸びていた。氷で覆われた小さい枝は白い葉のようだ。高く登るにつれ雪が落ちてきた。ミランダは地上からはるか上の方にある大枝にまたがった。スカートと足を引っ張り上げ、樽のように大きい枝に隠されて、下からはほとんど見えないことを期待して。ジェラルドは、その大枝の上で横になって遊び仲間の目をくらますことができたが、ミランダはオークから手を離してひっくり返る勇気はない。
そして、待った。
雪の塊が少し落ちて、その後しんと静かになった。ハリエットや二人の男の声を聞こうと耳をそばだてたが、相手も耳をそばだてようと動きを止めたのかもしれない。
ああ神様、助けてください。目を固く閉じ、冷たく荒い木の皮に額を押し当てた。
しかし突然、彼女の心の中で聞こえたのはローラおばさんの声だった。「あなたはエル・ロイ」
神は何故、ミランダをご覧になって、彼女を助けないといけないのか?彼女はハリエットにひどいことをした。ミランダは、神が彼女のことを気にかけているということが信じられなかった。
人間が何者だというので、これをみこころに留められるのでしょう?
ミランダは信じるしかなかった。あなたはエル・ロイ。
助けて、お願い。助けを送ってください。
足音が低木の茂みを通ってゆっくり進んでくる。だんだん近くまで。
ミランダが下の方をちらっと見ると、木が密集しているために地面にはほとんど雪がなく、通ってきた跡は残っていないようだった。足音は近づいてきたが、木の向こう側に沿って進んでいる。
勇気を出してもう一度見たとたん、喉が詰まった。
ハリエットが森の中を歩いてきた。片手にミランダのマントを掴み、もう一方の手にはピストルを持って。
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第19章
エリーがいない。
ミランダは他の子供達を連れて下の庭園から既に戻っており、マントやスカーフ、帽子、ミトンを脱がせるのに大騒ぎだった。ナーサリーはあまり心地よくない濡れたウールの強い臭いがしていて、部屋の隅に押し込まれた松の枝が唯一新鮮な空気を放っていた。
大晦日の夕食会があるので、今日の子供達の夕食はいつもより時間が早かった。キッチンでは単に、子供達の夕食と、盛大なパーティーのための食事を同時に準備することができなかった。しかし食事の時間になると、エリーはどこにもいなかった。
ミランダは、ナーサリー棟や、あらゆるクローゼット、部屋の隅々を二十分ほど探し回った。誰もいない廊下でアンダーメイドのジーンが近づいてきた時には、本当に心配になり始めた。「エリーを見つけましたよ、ミス・ミランダ」
二日前に家族棟であった出来事以来、ミランダがジーンを見かけるのは初めてで、今ここに彼女が現れたことと、エリーがいないことで、ミランダの息は喉の中で凍りついた。「どこなの?」
「私についてきてください、ミス」
「パラダイスへ行く道を約束してくれるまで、あなたと一緒には行かないわ」
ジーンは、口と目のシワがよく見えるほど近くまで来てミランダを驚かせ、低い声で言った。「もう一度エリーに会いたいんだったら、私と一緒に来るのよ」
「エリーに何かあったら、私が何をするか分かるわよね」ミランダは暗い声で言った。
その言葉にジーンはドキッとして、淡い色の目を二、三回瞬きさせた。そして、その目は細くなった。「私と一緒に来なければ、彼女はひどく傷つきますよ」
ミランダは体が固くなるのを感じ、ジーンがマントを着ているのに気が付いた。「外に出るの?ちょっとマントを取りに行かせて」ジーンは単純に抵抗しているように見えたが、ミランダは付け加えた。「マントを取りに行かせてくれたら一人でそっと出て行くから」
ジーンは、ウールのマントを取りに行くミランダの後をついて寝室に入ってきた。ミランダがボンネットと、ジェラルドの黒と赤のスカーフも掴んだのを見ても、反対しなかった。そしてミランダは、ジーンの後をついて階段を降りた。
マイケルは夕食会の準備を手伝っているはずだった。二人は食堂かキッチンを通り抜けるだろうか?ミランダは彼の目に留まるだろうか?
しかし家族棟まで降りた後、二人は裏の階段から庭園に出た。召使い達はみな、ゲストの寝室で手伝っているか、夕食の準備をしていたので、誰もいなかった。
屋敷の南側の端に向かって曲がったが、芝生を横切らず、森との境界線に沿って歩いた。ジェラルドの寝室の窓は、反対側の方向に面していた。彼女が見えるはずはない。
風が強くなり、氷の剣のように薄いマントを突き刺した。しかしミランダの心臓は、もっと凍りついているように感じた。絶望とはこれほど冷たいものだろうか?
細長い森を通って短い小道に入り、小作人が使う砂利道に出た。古い旅馬車が五十ヤード先にとまっており、それを運転していたのは、庭園にいた時、そしてスケートパーティーの時に襲ってきた男の一人で、背が高い方のジェラルドを襲った男だった。
馬車が開くと、ミランダを連れ去ろうとした丸顔の男が降りてきた。彼は中にいる誰かにうなずいており、ハリエットが見えた。
ハリエットは優雅に馬車を降りた。きつい顔には深いシワがあったが、ボンネットの下から見える髪はまだ濃い茶色で美しかった。ミランダを見てその目は光ったが、微笑みはなかった。
「ランダ!」エリーの声が風に運ばれてきた。
「エリー!」急いで前に進むと、馬車の隅に座っているエリーが見えた。小さく、とても寒そうに見える。マントは着ているが、ミトンも帽子もない。
ミランダはハリエットに何も言う必要はなかった。ハリエットはエリーが馬車から降りるのを助け、荒々しくジーンの方に押した。そしてメイドに皮の小袋を投げると、チャリンという音がした。「ありがとう、ジーン」ハリエットの声は低く、きつかったが、男には色気があるように聞こえるのだろう。
ハリエットはミランダに何の命令も出さず、ただ憂鬱そうに見つめ、待っていた。
ハリエットの沈黙が妙に怖かった。ミランダは馬車に乗り込み、ハリエットと男がそれに続いた。一瞬のうちに彼らは動き出し、ウィントレルホールを後にした。
「死んだと思ってたわ」ミランダはハリエットに言った。
「あなたはそれを望んでたんでしょうね」ハリエットは刺繍が入ったマントの端をぼんやりと触っていた。高い生地ではないが、質は良かった。手袋と、ベルベットのリボンの縁取りがついたボンネットも。どうやら、噂されたように哀れな売春婦として死んだわけではなく、恐らく誰か得意客を見つけたんだろう。ジーンと、多分この男達を雇い、この旅馬車を借りるお金があるんだから。
「どこに連れて行くつもり?」
「ロンドン」ハリエットはアクビを抑えた。
「私を殺すためにロンドンまで連れて行くの?」
ミランダはやっとハリエットに注意を向けさせることができた。「あなたを殺す?とんでもない。ただあなたを殺すためにこんな時間とお金を使ったんじゃないわ。あなたに紹介状もなく辞めさせられた後、私が追いやられた場所へあなたを投げ込むのよ」
「あなたは紹介状をもらう価値がなかったわ」ミランダははっきりと言った。
「私が通ってきた試練に値することは何もしてない」ハリエットはささやいた。「だけどあなたはそうなって当然」
「どうして——」
「黙らないと、トッジにあなたの舌を切り落としてもらうわよ」ハリエットは向かいの男にうなずいた。男は三日前、ミランダに指を突っ込まれたので、まだ少し腫れている細い目で彼女を見た。
一マイルほど無言のまま進んだ。道の両側が森林区域であるのを見て、ミランダはベルモアの領地を出ようとしていることが分かった。
ミランダは、公道にくぼみがあるため速度を落とさなくてはならない場所を正確に知っていた。
靴に入った石を取り除こうとするかのように前かがみになり、馬車の床から泥と藁を両手で掴み、トッジの目に投げつけた。そしてドアの取っ手を掴み、動く馬車から身を投げ出した。
肩を強く打って着地し、道路の脇で地面を転がった。歯がガタガタ鳴るほど強く木の根元にぶつかったが、息つく間もなかった。立ち上がり、スカーフを喉からはぎ取って放り投げ、森の中へ飛び込んだ。
マントが後ろではためいた。枝や茂みに引っかからないように、後ろに手を伸ばしてマントを掴み、近くに寄せた。風がボンネットを捉え、喉でリボンが引っ張られる。リボンを緩めると、ボンネットは頭から飛んで行った。寒いが、周りがよく見えていい。
後ろの方で、低木の間をガサガサと激しく動く音がした。ミランダは曲がりくねる道に並ぶ木々の周りを素早く動き、その音はだんだん弱くなっていった。
隠れる方法を見つけなくては。どうすればいいだろう?
ああ、ジェラルド。だけどジェラルドは彼女が見えるはずがない。
神様お願い、助けて!
走っている時は周りの木々に気がつかなかったが、突然、昔いとこ達と木登りを楽しんだ、古くて大きなオークのように見える懐かしい木を見つけた。ロビンフッドの愉快な群れのように、不用心な旅行者に飛びかかろうと待ち構えていたものだった。一番低い大枝には手が届かなかったのだが、倒れた木の大きな幹がちょうど根元に埋もれていて、それに乗れば手が届いたので、彼らがお気に入りの木だった。
テーブルより高い、倒れた木の幹に、スカートを引き上げてよじ登った。怪我をした肩が痛むので歯を食いしばり、その幹からまっすぐ空中に突き出している尖った枝を掴んでまっすぐ立った。倒れた木の幹の上に立ったミランダは、古いオークの一番低い大枝に手を伸ばした。今では彼女の顎の高さしかないので、軽く飛べば乗れた。ジェラルドについて行こうとした十二歳の頃と比べて体は柔らかくない。動くたびに肩に痛みが走り、重いスカートも邪魔だが、足を振り上げながら枝をまたいでひたすら登り続けた。
枝は密集しており、巨大な幹から外に向かって伸びていた。氷で覆われた小さい枝は白い葉のようだ。高く登るにつれ雪が落ちてきた。ミランダは地上からはるか上の方にある大枝にまたがった。スカートと足を引っ張り上げ、樽のように大きい枝に隠されて、下からはほとんど見えないことを期待して。ジェラルドは、その大枝の上で横になって遊び仲間の目をくらますことができたが、ミランダはオークから手を離してひっくり返る勇気はない。
そして、待った。
雪の塊が少し落ちて、その後しんと静かになった。ハリエットや二人の男の声を聞こうと耳をそばだてたが、相手も耳をそばだてようと動きを止めたのかもしれない。
ああ神様、助けてください。目を固く閉じ、冷たく荒い木の皮に額を押し当てた。
しかし突然、彼女の心の中で聞こえたのはローラおばさんの声だった。「あなたはエル・ロイ」
神は何故、ミランダをご覧になって、彼女を助けないといけないのか?彼女はハリエットにひどいことをした。ミランダは、神が彼女のことを気にかけているということが信じられなかった。
人間が何者だというので、これをみこころに留められるのでしょう?
ミランダは信じるしかなかった。あなたはエル・ロイ。
助けて、お願い。助けを送ってください。
足音が低木の茂みを通ってゆっくり進んでくる。だんだん近くまで。
ミランダが下の方をちらっと見ると、木が密集しているために地面にはほとんど雪がなく、通ってきた跡は残っていないようだった。足音は近づいてきたが、木の向こう側に沿って進んでいる。
勇気を出してもう一度見たとたん、喉が詰まった。
ハリエットが森の中を歩いてきた。片手にミランダのマントを掴み、もう一方の手にはピストルを持って。
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