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闇の中にも届く光

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私はごく普通の女性です。そして正直に言えば、「自分が間違っている」と認めるのは、あまり得意ではありません。 特に感情が動いているときは、頭では分かっていても、なかなか素直になれないこともあります。夫と意見がぶつかることもありますが、それでも支え合いながら歩んでいます。 けれど、仕事となると話は別です。私はかつて生物学の研究者として働いていました。研究の世界では、小さなミスが大きな結果につながることがあります。 ほんのわずかな計算違い、ほんの少しの不注意。それだけで、何日もかけた努力が無駄になってしまうこともありました。 私は完璧ではありません。失敗もします。そして失敗すると、落ち込みますし、「もっときちんとできたのに」と自分を責めてしまいます。 時には、失敗をごまかそうと思えばできた場面もありました。誰も気づかないかもしれない。少し説明を変えれば済むかもしれない。 でも、そのたびに思い出したのです。 たとえ人が気づかなくても、神様はすべてをご存じだということを。 聖書にはこう書かれています。 「闇もあなたに比べれば闇とは言えない。夜も昼も共に光を放ち/闇も、光も、変わるところがない。」 ―― 詩編139編12節 人の目からは隠せても、自分の心からは隠せません。そして神様の前では、どんな小さなことも明らかです。 正直に認めることで、評価が下がることもあるかもしれません。しばらく気まずい思いをすることもあるでしょう。 それでも、不思議なことに「正しい選択をした」という静かな満足感が心に残ります。 その後、思いがけない形で道が開かれたり、小さな成功が与えられたりすることが何度もありました。まるで、「よくやったね」と言ってもらえたような気持ちになるのです。 今でも、間違いを認めるのは簡単ではありません。 でも、それ以上に、正直に生きることを大切にしたいと思っています。 もしあなたが今、失敗や後悔の中にいるなら、どうか覚えていてください。 闇の中にいるように感じても、そこにも光は届いています。

【独身淑女のクリスマス】 第22章

→ 作品ページにもどる 第22章 一月一日  ミランダがいつも四苦八苦する小塔のドアは、ジェラルドの力強い手で容易に開いたが、鞭で打たれるように強い風に今にも吹き飛ばされそうだった。 「風が強すぎるわ。戻りましょう」 「だけど、ウィンウッド夫人がここじゃないとダメだって」 「ウィンウッド夫人?」  ミランダはマントを体に巻き付け、彼についてウィントレルホールの屋根の上に出た。風は強かったものの、上の方では太陽が輝き、時折、細くたなびく雲のために一瞬曇る程度で、下にいる彼らを照らし、赤いレンガはオレンジがかった金色に見えていた。  彼らは丸屋根の上で風が当たらない場所を見つけ、そこでは風が体の周りで優しく渦を巻いていた。ジェラルドは、厚地の大外套の袖を自分と彼女の周りに巻き、彼女を引き寄せてキスをした。  レンガの欄干を背中にし、繭に包まれているような彼のコートの中で、彼女は彼に身を委ねた。彼の唇は彼女を味わい、それから顎、首へと動いていった。 「ジェラルド」 「うん」 「キスするために私をここに連れてきたわけじゃないでしょ?」 「どうして分かったの?ちょっとプライバシーが欲しかったって」 「プライバシーを気にするんだったら、昨日みたいなキスはしないでしょ」  二人の男を縛った後、彼らは借りた馬車で村まで走り、地元の保安官に二人を引き渡して、森にハリエットの遺体があることを通報した。その後ミスター・ドライデールは、彼らを乗せて馬車で屋敷に戻り、その横をマイケルが馬に乗って走った。  その時ジェラルドは、ミランダが馬車から降りるのを助けた後、彼女を引っ張って熱烈なキスをしたのだった。馬小屋から走ってきた馬丁、屋敷の表玄関のドアを開けた執事、そして彼らを見ようとポツポツ出てきた家族の前で。フェリシティが恐ろしい金切り声をあげたので、二人は離れた。 「昨日はただフェリシティを悩ませるためにキスしただけだよ」彼女の耳にささやいた。顎に当たった彼の唇が震えるので、彼女は身震いした。 「あなたについて階段を上がってくる前に、もっと抵抗したらよかったわ。その膝で——」 「君の湿布におとなしく服従しただろ?豚小屋みたいに臭かったんだよ、そういえば」 「そんなことないわ」 「だから僕の膝はスモモみたいに...

【独身淑女のクリスマス】 第21章

→ 作品ページにもどる 第21章 ハリエットは、ミランダが隠れている木の数ヤード先まで来ていた。一、二分もすれば、通り過ぎるだろう。  そうしたら、木々を通り抜けて声が漂ってきた。「ミランダ!」  大変だ、あれはジェラルド。  ハリエットは頭をぐるぐる回して、後ろにある木々の辺りを探した。  ジェラルドはどうやって気が付いたのか?彼に呼びかけることはできない、だけど、ハリエットが彼に銃を向けることになってはならない。 「ミランダ!」  ミランダは動かず、息を殺していたが、上の枝から雪の塊が落ちてきた。その塊は、もっと雪に覆われた枝にぶつかり、突然、雪が連なって地面に落ちた。森の中で動くものは、他に何もなかった。  ハリエットは上の方を見上げた。ミランダが木の大枝にしがみついているのが見える。そして、発砲した。  焼け付くような痛みが肩の中で爆発した。星が見える。手が樹皮の上で滑るのを感じ、もっと強くつかもうと頑張った。だが、手足が思うように動かない。枝の上で横に滑り、足で枝を捕まえた。そして腕で。火が槍のように肩を突き刺した。  だがハリエットは発砲した。もうジェラルドは撃てない。  ハリエットは怒りをむき出しにした、言葉にならない叫び声を上げた。ミランダが思い切って肩越しに目を向けると、地面にピストルを投げつけ、木に突進してくるハリエットが斜めに見えた。ハリエットが木を登ってきたので、ミランダは枝が揺れ始めるのを手で感じた。  「ジェラルド!」ミランダは少しずつ木の幹から遠ざかり始めた。ハリエットから離れたい一心で。  誰かが走ってくる足音が聞こえる。ハリエットが雇った二人の男が近づいてきた。きっとジェラルドは彼らに負かされるだろう。  しかしその時、馬の蹄の音が森の中で響き渡り、彼女の鼓動と重なった。一頭ではない。少なくとも二頭、もしかしたら三頭かも? 「ミランダ!」だがその声はまだとても遠い。 「ジェラルド!」つかまっていた枝が急に下がり、ミランダの叫びは甲高い金切り声に変わった。手が少し滑ったが、足でもっと強くつかまった。 「惨めね、落ちればいい——」ハリエットは、蛇とその毒が渦巻く地獄から聞こえてくるような恐ろしい声で言った。そして、ミランダが捕まっている枝に再び体重をかけた。  ...

【独身淑女のクリスマス】 第20章

→ 作品ページにもどる 第20章 ジェラルドが図書室に向かったのは、ただ不機嫌だったからだ。大晦日の夕食会のために着替えをする時間を知らせるベルが、もうすぐ鳴るだろう。だが彼は、セシールが持っている二流のブランデーを一、二杯飲みたいだけだった。  女性にプロポーズしたのは初めてだった。一回目の試みで断固として拒否されたのは、ただ運が悪かっただけだろうか。  そして、自暴自棄の男子生徒のように、彼女にキスをしてしまった。  そうしたら、彼女はキスを返した。  それから……  彼女がわざと自分を突き放したことを、論理的に理解することはできたが、あれは、まるでお腹にパンチを食らうような言葉だった。 (彼女はどうすればお前さんが傷つくかを知ってる。誰とも親しくならない方が身のためだぞ)  いや違う。ミランダはそういう感情を持って生きてきたのかもしれないが、自分だったら、愛のない生活の方がよくないことを彼女に伝えようとするだろう。  ミランダのキスによって、彼女がジェラルドをしっかり繋ぎとめているという事実が単に強められた。彼の家は、彼女がいる場所だった。  そういう思いに耽りながら図書室の窓に目をやるとすぐ、マイケルが南側の芝生を横切って走ってくるのが見えた。子供を抱えて。  エリーだった。  ジェラルドは足を引きずって図書室の外に出、首の骨が折れそうになりながら階段を駆け下りた。 「キャプテン・フォーモント!」ミスター・ドライデールの声が上の踊り場から聞こえたが、ジェラルドは止まらず、大きな円形の玄関ホールでマイケルに会った。走るマイケルに強く抱かれていたことに加え、見知らぬ人の腕の中にいる恐怖のためか、エリーは泣いていた。ジェラルドを見るなり、彼の方に手を伸ばし、ジェラルドはエリーを抱えるために松葉杖をやむなく落とした。 「ミランダ……」マイケルは息を切らした。「馬車、ハリエットが……」  氷のように冷たい水が背筋を走った。「どこに?」  マイケルは頭を振った。「馬車で……」  そうだ、セシールの一番軽い馬車を借りたら追いつくことができる。しかしエリーが…… 「僕が乗ろう」ミスター・ドライデールがいきなりすぐ近くに現れた。「大尉、先に馬小屋まで行って、馬丁に言ってくれないか。キャプテン、エリーは...

【独身淑女のクリスマス】 第19章

→ 作品ページにもどる 第19章  エリーがいない。  ミランダは他の子供達を連れて下の庭園から既に戻っており、マントやスカーフ、帽子、ミトンを脱がせるのに大騒ぎだった。ナーサリーはあまり心地よくない濡れたウールの強い臭いがしていて、部屋の隅に押し込まれた松の枝が唯一新鮮な空気を放っていた。  大晦日の夕食会があるので、今日の子供達の夕食はいつもより時間が早かった。キッチンでは単に、子供達の夕食と、盛大なパーティーのための食事を同時に準備することができなかった。しかし食事の時間になると、エリーはどこにもいなかった。  ミランダは、ナーサリー棟や、あらゆるクローゼット、部屋の隅々を二十分ほど探し回った。誰もいない廊下でアンダーメイドのジーンが近づいてきた時には、本当に心配になり始めた。「エリーを見つけましたよ、ミス・ミランダ」  二日前に家族棟であった出来事以来、ミランダがジーンを見かけるのは初めてで、今ここに彼女が現れたことと、エリーがいないことで、ミランダの息は喉の中で凍りついた。「どこなの?」 「私についてきてください、ミス」 「パラダイスへ行く道を約束してくれるまで、あなたと一緒には行かないわ」  ジーンは、口と目のシワがよく見えるほど近くまで来てミランダを驚かせ、低い声で言った。「もう一度エリーに会いたいんだったら、私と一緒に来るのよ」 「エリーに何かあったら、私が何をするか分かるわよね」ミランダは暗い声で言った。  その言葉にジーンはドキッとして、淡い色の目を二、三回瞬きさせた。そして、その目は細くなった。「私と一緒に来なければ、彼女はひどく傷つきますよ」  ミランダは体が固くなるのを感じ、ジーンがマントを着ているのに気が付いた。「外に出るの?ちょっとマントを取りに行かせて」ジーンは単純に抵抗しているように見えたが、ミランダは付け加えた。「マントを取りに行かせてくれたら一人でそっと出て行くから」  ジーンは、ウールのマントを取りに行くミランダの後をついて寝室に入ってきた。ミランダがボンネットと、ジェラルドの黒と赤のスカーフも掴んだのを見ても、反対しなかった。そしてミランダは、ジーンの後をついて階段を降りた。  マイケルは夕食会の準備を手伝っているはずだった。二人は食堂かキッチンを通り抜けるだろうか?ミ...

【独身淑女のクリスマス】 第18章

→ 作品ページにもどる 第18章 ジェラルドは、やみくもに通路を下って行った。ミランダが投げつけた冷淡な言葉が彼女の本心ではないことは、分かっていた。ミランダは自分に無関心ではなかった。あのキスで本当の気持ちをさらけ出してくれた。  彼の安全を気遣って、ミランダは拒絶したんだろう。そう思うと、寒さが浸み込む手足が温まってきた。だから彼女は嘘をついたに違いない。  嘘をついたにしては、妙に上手だった。彼女は彼の目をまっすぐ見て、愛していないと言った。  どうして拒否したんだろう?ジェラルドと一緒になれば、彼女は自分が持っていないものを全て手にすることができる。そして彼は彼女を守ることができるのに。  あるいは、障害を持った彼の体では彼女を守ることができないと、本当に疑っているのだろうか。  いや違う、ミランダはそのことについても嘘をついたことが、彼には分かっていた。  ジェラルドの行きたい場所は明らかだった。旧館を探し、屋敷のずっと奥へ入って行った。カーペットは古く、長い冬の匂いがして、壁掛けは中世の従者のように通路の脇に立っていた。  やっと、ファミリーチャペルに入る木のドアの前まで来た。覚えていたドアより何故か短くて狭かったが、まだ深い木目があり、年月とウッドスモークのために黒ずみ、鉄が打たれていた。  ドアを押して開けると、ギシギシと大きな音がした。祭壇の上の細いステンドグラスの窓から射している、色がついた光のために目がくらみ、室内の暗闇に目を合わせるのに少し時間がかかった。四本の柱が直立不動の姿勢で立ち、繊細な丸天井に向かって広がっていた。わずかな風通しがあるだけの小さいチャペルなので、木のベンチはまるで床に押し込められているように見えた。  そして前の方にいたウィンウッド夫人は、振り向いて彼を見た。ジェラルドは彼女を見るなり、自分は彼女を必要としていることが分かった。はっきり説明することはできない。だが彼女を見つけるために、ここに来たのだった。  ウィンウッド夫人は立ち上がり、ジェラルドのところまで来て、その手を取った。「ねえあなた、こっちに来て座らない?」  ジェラルドは彼女と一緒に一列目のベンチに座り、松葉杖をそこに立てかけた。しかしここに来た今、言葉が出なかった。チャペルの静けさが骨に浸み込んできたが...

【独身淑女のクリスマス】 第17章

→ 作品ページにもどる 第17章 十二月三十一日  子供達はひどい状態だった。ミランダ、ミス・ティール、そしてベルモア家のその他のナーサリーメイド達は、彼らを落ち着かせるために今にも足元でぐるぐる縛り付け始めそうなほど、忍耐の限界に来ていた。  だから、ミランダは下の装飾庭園でかくれんぼをしようと提案した。ミス・ティールはそれに反論しなかったが、他のナーサリーメイド達は、子供達を外へ連れ出す前に着込ませないといけない手間を考えて、反対した。しかし、子供達はミランダの案に乗り気だった。庭は壁で囲まれているので、監督する必要はほとんどなく、子供達は自分達で遊ぶことができるというミランダの意見に、メイド達はやっと納得した。  ウィントレルホールにある上と下の装飾庭園は、壁に囲まれた大きな庭園だった。下の庭園の端に位置する門から出入りするようになっていて、上の庭園の方が小さく、二つの庭園を隔てた壁にある石のアーチを通って行き来するようになっていた。  下の庭園には子供達が隠れる場所が多く、ミス・ティールと二人のナーサリーメイドが門のところに立って、子供達が見えないところへ行かないよう見ていた。ミランダは、曲がりくねった小道を通ってアーチ道まで歩いた。  一年のこの時期、上の庭園は殺風景で、葉が落ちた木々が雪に覆われ、小石が敷かれた歩道にはやせ細った藪が並んでいるだけだった。まるでミランダの憂鬱な気分と同じ——彼女は壁に沿う凍った石のベンチに腰掛け、ただ空間を見つめていた。春には花々が我先にと咲くのだが、今日は横たわり眠っている。  高い石の壁を超え、また開いたアーチ道を通り抜け、子供達の甲高い声と笑い声が漂ってきて、氷に覆われた石の上で妙にこだましていた。鋭い空気が鼻と肺に噛み付いてくるようだったが、その痛みが何故か心地よかった。  二十年前に取った自暴自棄の行為——ついにその報いを受ける時がきた。責められるのは自分以外の何者でもない。  ミランダは心から恐怖を感じていた。 「ああ、神様」彼女の唇から漏れたその叫び——その柔らかい響きは湿った雪のようだった。ローラおばさんは主の存在を確信しているが、ミランダは庭でたった一人。今までの人生の中で、主が近くにいると感じたことは一度もなく、今もそれは変わらなかった。全能の神とそのような交...

【独身淑女のクリスマス】 第16章

→ 作品ページにもどる 第16章 十二月三十日  新しい湿布を貼っている間ずっと、寝室の壁を眺めているのに飽きたジェラルドは、マドックスが湿布をはがした後、足を伸ばしに出て行った。  応接間は肉が詰まったミートパイのように人が溢れ、若い女性達が翌日の大晦日に開かれる夕食会用のドレスのことでおしゃべりしていた。ジェラルドはこっそり戸口を通り過ぎ、子供達の笑い声が聞こえる音楽室の方へ向かった。  ほぼ一年中、ウィントレルホールのダンスフロアは、片側が音楽室、反対側が物置として使われており、絵が描かれた屏風で仕切られていた。部屋に入って初めて、自分がミランダに会えることを期待しているのに気付いたが、ピアノのところには家庭教師がいて、少女らがダンスのステップを習っていた。驚いたことに、教えていたのは彼の母で、足の動きや手の握り方を指導しており、笑い声とともにその顔は輝いていた。開いた戸口に息子を見つけると、微笑んだ。 「ああ良かった」母が言った。「ジェラルドが弾いてくれるから、ミス・ティールは女の子達に教えられるわね」 「僕ですか?」声が裏返ってしまったのが恥ずかしかった。「マダム、もう何年もピアノを弾いてないんですが」 「そんな完璧じゃなくていいの。ちょっと軽く弾いてくれたらいいのよ、女の子達がステップの練習ができるようにね。ゆっくり弾いてくれた方がいいわ」  身動きが取れなくなったジェラルドは松葉杖を取り、わざとゆっくりピアノの方に向かった。近くの椅子に松葉杖を置いて、腰掛けた。家庭教師のミス・ティールは、とてもシンプルな繰り返しのメロディーを弾いていたので、それほど難しい楽譜を弾く必要はないようだった。  ゆっくり、完全に滅茶苦茶な指使いで、荒れた海を進んで行く船のように和音を叩き始めた。しかし、四苦八苦してメロディーを二回繰り返したら、よろよろせずに指が動くようになり、ミス・ティールが弾いていた速度の半分ぐらいの速さで弾くことができるようになった。少女達がクルクルと舞い、自分達の間違いを見てクスクス笑っているのを見るのは意外と楽しかった。  音楽室へ入るドアが開き、ミランダが見えた。その目はジェラルドの目と合い、一瞬キラリと光った後、逸れた。  ジェラルドは、彼女と二人だけで会う時間を持てずにいた。少なくとも、勇気を奮...

【独身淑女のクリスマス】 第15章

→ 作品ページにもどる 第15章 夕食のために着替える時間を知らせるベルは既に鳴ったが、ウィンウッド夫人ことローラは何か気になることがあったのか、自分の寝室を通り過ぎて、屋敷の旧館につながる階段を昇って行った。子供の頃からよく知っている、階段から通路、そしてまた階段へと、常に登っていく曲がりくねったルートを辿った。最後の細い階段の上で、ドアを開けるのに苦労したが、肩で押したらやっと開き、ウィントレルホールの屋根の上に出た。  ずっと下にある大きな玄関広間まで光が差すようにスリットガラスが入ったレンガの丸屋根には、側面に二つの小塔があり、そのうち一つにドアが付いていて、ローラはそこから外に出たのだった。これほど高いと風がとても強かったが、毛皮の襟がついたマントを着ていたし、新鮮な冷たい空気のおかげで目が覚め、生き生きとした気分になった。  レンガの欄干が丸屋根を取り囲んでいて、ローラはその隙間を通り抜け、周りを歩いて田舎の景色を見ようとした。今朝、子供達が雪合戦をした前庭の芝生の雪に残った足跡が見えた。遠くでは、雪がかかった木々がきらめき、枝から氷が落ちていた。さらに遠くの方では、四角い形の放牧地が低木で区切られ、川は黒みがかった線のように見えていた。  ローラは空想にふけった。寒さが頬を刺すようだったが、景色があまりに美しいので戻るのが惜しまれ、それにこの心地よい平和、ずっとそこに浸っていたいほどだった。  だがその時、ドアが開く音がして振り向くと、ミランダが屋根の上に出てきた。  その目は——何ということか、その目は死んでいるようだった。  ミランダは戻ろうとしたが、ローラはその手を掴んだ。「いらっしゃい。一緒に景色を楽しみましょう」  ミランダがしばらくためらっていたので、ローラは彼女が自分の提案に合意するかどうかが分からなかった。しかし、ゆっくりと欄干の隙間を通り抜けてきて、ローラの隣に立った。 「お邪魔する気はなかったんです」ミランダは言った。 「そんなことはないわよ」 「一回目のベルはもう鳴りましたから」 「そうね、知ってるわ、だけど……」ローラは深呼吸した。「みんなあなたのせいね」 「私ですか?」緑色の目は、ローズオレンジ色の光の中でくり色に見えた。 「あなたはとても落ち着いてるわ、ミランダ、そ...